培養液中にエサを豊富に加えると、繊維状態だったクエン酸合成酵素は、再び元通りバラバラになって酵素として働くようになります。

タンパク質でできている酵素は、活性があるときは細胞液中に溶解しているので見えませんが、重合した繊維状の分子は電子顕微鏡で見えるようになります。

酵素が繊維をつくるなどということは、当時(1995年)はとても珍しいことだったので、私はかなり頑張って論文にまとめました。

私の代表的な研究成果です(『テトラヒメナのミトコンドリア内の繊維状含有物は14-nm繊維タンパク質でもあるクエン酸合成酵素を含む』)。

そのことを私はサントリーの細田君に、興味深い話として熱弁をふるったので、彼は「沼田はミトコンドリアを研究している」とインプットしたようです。

細田君は、会社の研究室でヒトがウーロン茶を飲むと、どのような変化が起こるのかを研究していました。研究チームの研究成果はとても興味深いもので、ヒトがウーロン茶を飲むと、呼気中の二酸化炭素の量が増加するというものでした。

これはどういうことなのでしょうか?

彼の話を聞いて私が考えたことは、

「ヒトがウーロン茶を飲むと、そのなかにある有効成分が、ミトコンドリアの酸素呼吸反応を活性化する。だから、酸素をたくさん吸って、二酸化炭素をたくさん排出する」

ということでした。ミトコンドリアの酸素呼吸反応によって生じるエネルギーは、アデノシン3リン酸(ATP)という物質に蓄えられます。

この物質は、エネルギー通貨ともいわれ、生命活動に必要なエネルギーを必要なところに届けます。

体内でエネルギーが出入りするところには、必ず存在するといってもよい物質で大量に存在します。

※本記事は、2021年4月刊行の書籍『誰も知らない紅茶の秘密』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。