第二章 道徳と神の存在

夏休みを数日後に控えたころ、昼休みに宗が、「お前らは信じひんと思うから、言うのをやめとこかと思てんけどな。やっぱり気になるから話すわ。実は、俺は二度も不思議なというか、恐ろしいものを見たんや」と普段以上に神妙な顔つきで話した。

「何や。いつものお前よりももっとむつかしい顔してしゃべるやないか。はっきり言えや」と勉が言うと、

「実はなあ、昨日の夜が二度目やったんやけど。王子動物園の北にキリスト教系の女学校があるやろ。道路沿いの校舎の上にマリア像が建ってるんや。夜には、淡いライトで照らされてる。阪急電車とJRの車窓からも見えるけどな」

「そんなことは誰でも知ってるやん。それがどないしたんや」

「それがや、そのマリア像が動いたんや」

「そんなアホな!」