百合は弾む足取りで座敷の方へ行った。綾菜が久しぶりに笑ったのを見て、とても嬉しかった。これならきっとすぐに良くなられるに違いない。

こうして、百合は習い事に出かける度に、帰って来ると離れへ行き、学問の内容や面白い話、剣術のお稽古の進捗(しんちょく)状況から同門の少年剣士たちの悪戯まで、せっせと綾菜に話すようになった。

百合と同年の門下生には郷士(ごうし)の子供などもいて、みんな早口に男同士の乱暴な言葉でしゃべるので、百合は最初なかなか仲間たちの会話についていけなかった。

でも親しくなっていろいろ話すうちにどんどん慣れて、あっという間にその少年たちの言葉でしゃべれるようになった。

百合がふんだんに男の子らしい乱暴な表現を使って面白おかしく話すので、時々綾菜は声を上げて笑った。だから百合は、出かける時は、必死になって面白い話や会話を仕入れるのだった。
 

※本記事は、2021年2月刊行の書籍『遥かなる花』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。