「おお、桔梗ちゃんいいこと言うねえ。確かに江戸時代までは『敵討ち制度』って言うのが公認されていて、親を殺された子供が敵討ちをして、敵討ちされた相手の子供がまた敵討ち……みたいな負の連鎖を永遠に繰り返していたんだな。ワタシたちはそんな大それたことじゃなくても、依頼された怨みを代わりに晴らしてやって、依頼人にはまた復讐の矛先が及ばないようにしてやろうってことさ。まあそのうちワタシたちが代わりに思いきり怨みを買うことになるかもしれないけどね」

「で、私にそれに加われと……?」

「ああー、まあはっきり言ってそれはどっちでもいいんだわ。ワタシは親戚の爺ちゃんが地下で風魔の次郎斎さんとつながってて、桔梗ちゃんのことを聞いたんだわ。桔梗ちゃんをくれぐれもよろしく頼むとか言われたんだけど、まあ桔梗ちゃんにとっては有難迷惑かもしれないしね」

「はあ……」

「まあとりあえずワタシたちと一緒に来てみない? 桔梗ちゃん自由の身かもしれないけど、きょう日この世の中では金も身分もないと本当の自由や幸せは手に入らないしね」

「幸せ……ですか。でも私何が幸せかもまだわからないので」

「なんでもいいじゃん。とりあえずおいしいもの思いっきり食ってみてもいいし、女の子らしくオシャレでもしてみてもいいし。恋愛したり、デートしてみたりしてもいいんじゃね?」

桔梗は少し考えて。

「そんな、人並みの幸せを受け入れる資格が私にあるのでしょうか」

すると、フジオカがゆっくりと微笑んで、

「大丈夫ですよ、桔梗さん。一緒に行きましょう。幸せになる権利は、誰にも平等にあります」

桔梗はその時、この二人について行くことを決めた。ハインリヒ・フジオカに、何か同じ境遇の人間の持つ『匂い』を感じたから。

「まあしばらくは『大道芸人』を装って暮らしてみたら。ゆくゆくはその大道芸で世界大会にでる、なんてえのもいいかもよ」

※本記事は、2021年3月刊行の書籍『怨み・ハラスメント』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。