当然と思われるかもしれませんが、未成年の患者さんは判断能力が十分でないため、親などの保護者によって代替されます。逆に、高齢のため認知機能が低下し判断能力がないと思われる場合、家族などの代理人の同意で治療が行われます。

特に意思疎通のとれない高齢者のインフォームド・コンセントにおいて、さまざまな問題が発生します。

本来、インフォームド・コンセントは本人への病状説明および治療に対する同意を得るものですが、本人に判断能力がないため、家族がそれを請け負います。

日々臨床していますと、本人がもともと望んでいない治療が行われているのではないかと思われる事例に、よく遭遇します。

例えば、高齢者の延命治療です。認知症などが進行し、寝たきり状態でコミュニケーションがとれなくなり、嚥下(えんげ)機能が低下して、食事をとることができなくなると、今の日本では胃に穴をあけて強制的に栄養を入れる胃ろうという治療を受けるかどうかを家族(大半は本人の子ども)に確認します。

そうすると家族の中には、

「胃ろうをしないと死んでしまうのですか? これまで元気だったのに、このまま死んでしまうのは納得できません。少しでも長生きできるよう、胃ろうをお願いします」

と言われる方が多数います。

こういう場合に私は、この人に意識があったとき(精神的に生きていたとき)、終末期に胃ろうを望んだのであろうかと考え込んでしまいます。

おそらく、大半の方は望んでいないのではないでしょうか。

みなさん、想像してみてください。自分で動くことも、食べることも、トイレに行くこともできず、改善の見込みもなく、ただ生きていることを。

それでも家族が最後まで介護してくれるなら理解はできますが、施設に入所させられてまでも生き永らえたいと思うでしょうか。

※本記事は、2021年4月刊行の書籍『やぶ患者になるな!』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。