インフォームド・コンセントの問題点

インフォームド・コンセント(informed consent:IC)とは、欧米、主にアメリカから入ってきた概念で、わが国では「説明と同意」という訳語が広く用いられており、「説明を受け、納得した上での同意」という意味です。

医師などの医療者が病気や容体、つまり患者さんの体の中でどのようなことが起こっているかということや、検査・治療の内容、代替手段やリスク、合併症などについて患者さん本人に十分な説明をし、患者さんはその内容をよく理解し、納得した上で同意して治療を受けるというものです。

インフォームド・コンセントが不十分な場合は、検査や治療の必要性や効果がわからず、自分で判断して治療や薬の服用を途中でやめてしまうなど、効果が出にくくなってしまうケースがあります。

逆に、インフォームド・コンセントを十分に患者さんが受けることで、医師などの医療者とのコミュニケーションが良くなり、信頼関係が高まるほか、検査や治療の必要性が理解できるので、患者さんがより積極的に診療に参加できるようになる効果もあります。

医師の考えがわかれば患者さんも意見を言うことができ、不安感をなくすことにもつながります。結果として、治療効果を高めることも期待できるのです。

インフォームド・コンセントをさらに推し進めた考え方で、インフォームド・チョイス(informed choice)というものもあります。

インフォームド・チョイスは、「説明を受けた上での選択」という意味です。

例えば、手術と抗がん剤治療の予後に大差がないと考えられる場合のように、選択可能な治療方針が複数ある場合は、医師から十分な説明を受けたり、情報を集めたりした上で治療方法を選択するということです。

欧米でインフォームド・コンセントが必要なものとして導入されてきた歴史的な経緯を見てみると、1947年、ナチスの戦争犯罪を裁いたニュルンベルク裁判で明らかにされた人体実験が契機となって出されたニュルンベルク綱領が、その端緒と考えられます。

このニュルンベルク綱領は欧米の医師に強い衝撃を与え、それまでの医師主導の医療を変革するきっかけになりました。

その後、インフォームド・コンセントが欧米で重要視されてきますが、その背景の一つに医療訴訟の問題があります。

インフォームド・コンセントが本来、極めて異常な人権無視の人体実験に対する歯止めから発祥したものであり、医療不信、それに対する患者さんの権利保護という観点から、患者さん側の意見が優先されることになりました。

私は2001年に医師になりましたが、ちょうどその頃から日本でも医療訴訟が増え、欧米のインフォームド・コンセントという考え方が重視されるようになりました。

これまで述べてきたインフォームド・コンセントの説明をお読みいただくと、患者さん本位の考え方で、患者さんにとって悪い面はないと思われるかもしれません。

しかし、どんな物事にも必ず良い面と悪い面があり、インフォームド・コンセントにも問題点があります。

どういった問題点があるでしょうか?