硬派の海堂も、オネエの紅弥もGELATOに目を通したことがなく、巡波が美少女であることは認めていたが

「一体、いつになったらドラマやCMに使われるんだ?」

と、呑気にハードルの高いことを言ってのける。巡波が四つ葉館に居る大きな理由は祖母が大家をやっているからであり、都会で一人暮らしできるくらいの給料は毎月口座に振り込まれていた。

巡波に関心がない、2人との共同生活は意外に悪くなかった、いや、むしろ心地良かった。

現在19歳の巡波は来年、上京しようと考えている。GELATOを上回る雑誌との契約、彼女は掴み取ることができるだろうか?

初恋の人

紅弥がオネエ気分に浸っている原因は彼の父親に起因する。

父は紅弥に、ルージュやアイシャドウを与えたわけではない。野球やサッカー、バスケットボールなど彼がエナジーを消費したい遊戯には、日が暮れるまでとことんつき合った。

父は母にも優しかった。実の息子の自分が嫉妬するくらいの愛妻家。紅弥の初恋の人は実父であり、彼を超える男性はこれまで現れなかった。

海堂のことをどう思っているか? 嫌いではない、嫌悪感なんて微塵も無い。しかし、恋愛対象ではないことは明らかだった。

決定打になるような魅力がなく、海堂は一途に一人の女性に想いを寄せていたことを知っていたから。今夜も紅弥は夜の歓楽街に立つ。

いかがわしい呑み屋に来るお客さんが、彼の「つがいの人」になる可能性は低いが、出会いよりも大金をこのネオン瞬く夜の街で掴みたかった。

パパ、ベニのこといつまでも見守っていてね。ママがさみしくないようにベニ、がんばるから!

「はぁい! いらっしゃいましぃ! 今ならハイボール1杯、80円からでぇす!」

※本記事は、2021年1月刊行の書籍『AFLC』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。