一瞬でも、羨ましいと感じたのは本当だった。病死や事故死だったら、悲しんでいたのだと思う。天才哲学者とまで言われ、すでに極め人の境地にいた陽子が、死を選んだのだ。

極めた先に死を選んだことに、何かしらの潔さと勇気を、陽子に見た気がした。誰宛の遺書もなく、謎の言葉を残して……。

「ヤクソクの次元へいくんだ!」……。

荷物のほとんどは、処分されていた。大好きだったゴスロリファッションで、お気に入りのアロマ全種類を部屋中に、そして自分の身体へと浴びていたらしい。

まるで屍体処理を施したみたいで、発見された後も、匂わないようにとの心遣いだったのかもしれない。小さな置物がひとつ、出窓に置かれていたと……。それはガネーシャだった。

警察は単に、処分する際に忘れてしまったのだろうとの見解だった。形見分けとしてガネーシャをもらった。日本的、死者を送り出すイベントがすべて終わったときには、49日がすぎていた。

大学のサークルでは、陽子の後継を私が担うことになり、彼女の功績に尊敬をいだかずにはいられなかった。しかし、自ら命を絶ってしまったとなれば、評判は落ちる一方……。

私の葛藤は日々大きなストレスとなり、眠れない日々が続いていた。

(解せない、なぜ陽子は自殺を?)

自問自答は自分を苦しめるだけで、答えは見つからない!

(そっか、ガネーシャか! 何かありそうだなぁ)(インドね……)(行くしかない!)

私の直感はザワついていた……。気づいたら成田を飛び立ち、インドへ降り立っていた!

(陽子、来たよ! あなたが私に、ヒントを与えてくれた場所へ……)

※本記事は、2021年4月刊行の書籍『ヒマラヤ聖者の秘宝』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。