(5)遺産分割協議は、いつまでにしなければならないか

身内の方が亡くなった直後は、葬儀や行政などの手続きに追われ、また気持ちにも余裕がなく、遺産分割を行う気持ちの整理がつかないことも多いでしょう。いつまでに遺産分割協議を行わなければならないという制限はありません。

しかしながら、被相続人に借金があり相続放棄の手続きを行う場合には、原則として被相続人の死亡を知った日から3カ月以内に必要書類を揃えて家庭裁判所に相続放棄の申述をしなければなりません。

また、相続税の申告が必要なケースでは、その関係で10カ月以内に遺産分割協議を行う必要がある場合があります。

そのような期間の制限がない場合でも、時間の経過によって別の相続が発生し(数次相続)、相続人としての権利を持つ人が増えることが考えられます。人数が増えれば増えるほど、協議の成立が難しくなったり、認知症や未成年者、行方不明者が現れる可能性が高くなりますので、早めに遺産分割協議を行うことが望ましいといえます。

ワンポイント~相続人に相続させたくない~「廃除」と「相続欠格」

「お前なんか勘当だ!」という言葉は現在ではあまり耳にしませんが、被相続人が、第一順位または第二順位の推定相続人(相続する予定の人)から相続権を奪う手続きも用意されています。

 

それが、「廃除はいじょ」です。ただし、重大な手続きですから、自分の気分次第で廃除することはできません。

 

・被相続人に対する虐待
・被相続人に対する重大な侮辱
・その他の著しい非行

 

という限られた事由があったときに廃除することができ、手続きの方法は、1.生前に家庭裁判所に申し立てるか、2.遺言書に廃除する旨を記載して行います。廃除された旨は、廃除された推定相続人の戸籍に記載されます。一度廃除しても、被相続人が許せば取り消すことができます。

 

ところで、ある相続人に相続させたくない場合は、別の相続人に相続させる遺言書を作成すれば済むのではないでしょうか。実は、第一順位の相続人(直系卑属)と第二順位の相続人(直系尊属)には、遺言によっても侵害できない最低限の権利(「遺留分」といいます。)がありますので、遺言による方法では、全く相続させないことにはできないのです。このため、要件に該当する場合には、廃除が効果を発揮します。

 

この他、一定の要件に該当すると、法律上当然に相続権を失う「相続欠格」というものがあります。一例を挙げると、

 

・わざと被相続人または先順位、同順位の相続人を死亡させ、または死亡させようとしたため、刑に処された者

・詐欺または脅迫によって、被相続人に遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、または変更させた者

・被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、または隠匿した者

 

などです。相続欠格の場合は廃除と異なり、戸籍には記載されません。

※本記事は、2021年4月刊行の書籍『相続について知りたいことが全部見つかる本』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。