そんなイジメは僕に対してだけじゃなかった。給料泥棒だとののしられ、人格否定するような執拗な攻撃に負けて、一人、二人とI証券の仲間たちは辞めていった。使えない人間を辞めさせること。合併後の人員整理。それがこの部署の本当の目的だったのだ。

このときの僕には将来に何の見通しもなかった。ここは望んだ職場ではないが、一部上場企業の証券マンというステータス、これを捨てることの恐怖も大きかった。今、会社を辞めたら、またあのしんどい就職活動だ。ディーラーとしての経験も中途半端だし、何かこれといってやりたいことも思いつかない。今も地獄だが、就活でまた面接に落ち続けるのも、地獄だ。

ただ、毎日見張られて、揚げ足を取られネチネチと怒られる日々には、もうウンザリだ。外回りに歩き疲れて少し休みたいと思っても、尾行がついているので休憩もできない。ヒラの社員同士で尾行の位置をお互いに連絡し合い、なんとか見張りがいないのを確認して駐車場の車の陰に隠れてしばらくしゃがんで休む。惨めだ。辛くて母親に電話をかけて、もう会社を辞めたいと泣き言を言ったこともある。

「そんなに辛いなら辞めてもええよ」

母にそう言われると、ここで辞めてしまうのは情けないかも、と気持ちが揺らぐ。このまま働くのか、辞めるのか、辞めたら何をするのか。一体どこに向かって歩けばいいのか。目的地はどこにも見えなかった。

そんなとき、僕はあることに気がついた。営業成績が上がっている人は尾行される頻度が低い。管理職2人が全員の後をつけることはできないので、仕事も我慢もできず辞めそうになっている人にターゲットを絞り、その人に張りついて、追いつめて退社させるのが向こうの作戦らしい。

よし、それなら営業成績を上げよう。

……どうしたら商品を買ってもらえるのだろう。

何が何でも、この悲惨な毎日を改善するために、できることをするんだ。

この場所で生き抜くために、必死になって僕は考えた。

※本記事は、2021年4月刊行の書籍『よそ者経営』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。