火葬の間、斎場の食堂で昼食を摂った。

「死亡診断書も見たことないのに、生まれて初めて見たのが死体検案書。十万円だったの。それもね、引き取りに行った日、警察署で金額の連絡も何もなかったのに、担当医師の病院を教えられて、『十万円』持ってきましたよね、って当たり前みたいに言うの。私、もしかして、と思って十万ぴったり持って行ってたのね。無かったら、家までカード、取りにいかなければならなかったわ、往復四時間かけて。いくら民間ではないと言っても、不親切きわまりないよね」

「芹山斎場だけは、最初の日に一万四千円払うって葬儀社から言われてたの。そのお金の分は良典さんが持ってたから、借りたわ。死体検案書の病院も、電話したら『昼休みだから』って、遺体を運んだまま、一時間以上待ったの。さらに、その医者にも会わず、受付で十万払って受け取っただけ。親切なのは葬儀社だけだった」

明純の愚痴ともつかぬ話を聞き、さらに芹山斎場に行く前に、遺体は家にはあげられないけど、葬儀社の車を、家の前に停めてくれたと言って、その車の写真も見せてくれた。

約二時間後、骨になったサクラを受け入れた。脚の骨、膝の骨が太く、大きく、健脚だったのだと、あらためて思わされた。

サクラの骨壺と共に明純の家に行き、祭壇を作りに来た葬儀社の二人との打ち合わせを、冬子も聞いた。

一日置いて通夜葬儀。

心とは裏腹に、時は人を待たなかった。
 

※本記事は、2020年12月刊行の書籍『駒草 ―コマクサ―』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。