Dさんは、深く考えて「神に少しでも近づくために人々の安らぎの場となる大教会を作っている」と答えました。

仕事の世界に、このような精神性(スピリチュアリティ)を持つことは、なにか崇高な意味を感じます。ここまで働く目的を突き詰めれば、長期的なキャリアを築く大きな牽引力になることは、間違いないでしょう。Dさんの自分軸には、まさしく仕事魂のエネルギー源が埋め込まれています。

これは、アドラー心理学のライフタスクで言えば、仕事のタスクと関連したスピリチュアルタスクになります。

Dさんにとって、お金を稼ぐことを目的にして働く時と神に少しでも近づくことを目的にして働く時とどちらが多くの幸福を感じたでしょうか。おそらく後者で、アリストテレスの言う最高善に達しているのではないでしょうか。

各人の働く目的が共同体感覚として一つになれば、勇気づけの職場になる

最後に、この項目のまとめとして、三人の石切職人の喩え話をアドラー心理学で読み解いて(解釈)みましょう。傍線部は、アドラー心理学のキーワードです。

アドラーであれば、「三人の仕事は、三人とも貢献という価値を生み出している。貢献とは、まさしく傍を楽にしているからだ。ただし、このことを認識しているのは、Aさんのみである。BさんとCさんは、私的論理、Aさんは、コモンセンスで働いているという相違がある。また、共同体感覚を感じているのは、Aさんである。目的は、人間の基本的欲求と関連しライフスタイルの影響を受ける。Aさんは、BさんやCさんが苦難で挫折しているときに働く目的で、勇気づけをする(勇気づけの職場)」と答えるのではないでしょうか。

※本記事は、2020年2月刊行の書籍『もし、アドラーが「しゅうかつ」をしたら』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。