たいした雨が降らないまま、梅雨明け宣言が出された。真夏に近い陽射しが、レースのカーテンを通して容赦なく射し込んでくる。

二週間もしないうちに、レナは逞しくもさっさとファミレスの仕事を見つけ、六時間だけだから、なんて言って和枝に遙太を預けていく。

「アンタねえ、先に保育所を見つけてから仕事を探すべきでしょ。時間も場所も関係なしに、子どもはギャアギャアと走り回るんだから、和枝さんの大変さも考えなさいよ。ほんと、迷惑ってことばを知らないの」

「それはそうなんですけど。でも仕事をしてないと、保育所に入れて貰えないんですよ。意外と今の世間に疎いんですね、希美さんって」

希美さんの眉が吊り上がり、私と和枝は、まあまあ、なんて二人を宥める。

レナがここに来て二か月が過ぎようとしている。

来た当初は伸びすぎた庭の草抜きを手伝い、和枝の横で調味料の分量を教わり、希美さんが買ってきた積み木で遙太と遊んだりしながら暮らしていた。その姿は楽しげに見え、何とかここの生活に馴染もうとしているようで健気にさえ思えた。

平身低頭とまでは言わないが私たちの言うことを素直に聞き可愛らしさも見せていた。それが一か月くらい前から、障子の向こうで揺れる火のような本音が見え始めた。

和枝は孫守のやり直しだと言いながら、甲斐甲斐しく遙太の面倒を見ている。