第二章 新しい朝

八時十五分会社に着いた。昼休み仲のいい同僚とランチへ。

「ねぇ、聞いてもいい。ゆりさん、一人暮らしって寂しくない。ごめんね」と……。

「何言っているのよ。全然寂しくないのよ。一人がこんなに楽だって思いもしなかったの。食べたい時に食べて、寝たい時に寝る。自分のペースで出来る、自由気ままですごく楽しいの」

自分に素直になれた。ずっと夫と子供の為に生きて生活して来たから、こんな生き方もあるのだと思った。

ふっと仕事辞めようかなと思う。第三の人生自分の為に生きてゆこうと考えた。

仕事辞めた後の生活、計画等時間をかけて考えて、一週間考えて答えが出た。今年の十二月いっぱいで仕事を辞めることにした。

その夜、息子たちと食事をしながら話した。

「お母さん、仕事を辞めようと思っているの」

年金をもらうまでの計画を話した。

「お母さん、自分の為に楽しい人生を送りたい。一人暮らしは意外と楽しい。やりたかった事があるの。絵画教室と洋裁教室に行きたいし、カフェでゆっくり本を読みたいの」

「急に一人なって寂しくないか心配だった」と浩輔。

「お母さん、やりたい事あったんだ?」と祐輔。

「そうよ、たくさんあるの。あなたたちが立派に育ってくれたから安心して好きな事をやりたいの」

「わかった。お母さんの事だから、ちゃんと計画立てているだろうし安心しているよ。お母さん、楽しんでね」

「賛成だよ」二人。

「ありがとう」

三人でお酒も飲んで楽しく話をして帰った。

数日後、自分の気持ちを上司に話をして、「よろしくお願いいたします」部長が心配し、

「仕事やめて、大丈夫なのか。」

「はい、大丈夫です。自分の為に生きようと思います。息子達も賛成しています」

「そうか、分かった」

スッキリした。仲良し三人にもランチの時、話したら先輩が、

「頑張れ」エールを送ってくれた。

「えぇっ、寂しい」と後輩。

「私は自分の為に生きてゆきたいの。好きな事をして! だから応援してね」

経理に行き、退職願提出、退職金等くわしく聞いた。有給消化の為十二月十五日まで出勤。最後の日は仕事納めの二十八日に出勤。

「二十五年お世話になりました。この会社でとても幸せでした。ありがとうございました」

後ろの方に社長まで来ていただいて感激した。

寂しさと切なさで胸がいっぱいだった。清々しい気持ちで会社を後にした。

会社の駅の近くで元夫がいた。

「あれ、どうしたの?」

「子供達から聞いた。お疲れ様でした。食事でもしないか」

驚いたけど、行くことにした。

素敵なレストランを予約していたようだ。

「お疲れ様でした。僕と子供達の為によく頑張ってくれたね。子供二人も立派に育ててくれてありがとう」

赤いワインで乾杯した。嬉しかった。

変な感じだけど、古い友人のような気持ちだった。

「仕事やめて生活は大丈夫なのか」

「ええ、あなたのおかげで計画立てれば大丈夫です」

「口座に三百万振り込んでいるから生活費の足しにして」

「本当に! ありがとう」素直に受け取ることにした。

食事も済んで帰る時「今、どうしているの」と聞こうと思ったが止めた。もう関係ないから。

「今日はありがとう。あなたも体に気を付けて頑張ってね。さようなら」と別れた。