女性の家で発見された誰のものかわからない遺骨

家庭裁判所に対し、甥を申立人、当NPOを後見人候補者として法定後見を申し立てた。家庭裁判所から当NPOが後見人として選任され、法定後見が開始された。

また、多額の財産が見込まれたため、後見監督人を申し立て、専門職後見監督人が認められた。法定後見が発効し、本格的な後見事務を開始した。

最初に現在保有の全財産の確定とご自宅の整理を行った。ご自宅には通帳、印鑑、キャッシュカード等が散乱していて、どれがT様の所有で、有効なものかどうかが不明のため、T様名義のすべての通帳を整理した上で一本化し、資産額の確定作業を行った。

その作業と並行して、ご自宅整理を行い、貴重品と不要物との分別をしていった。ご自宅には、亡姉の遺骨以外にも誰の遺骨か不明の一柱が残されており、不明遺骨の特定をしなければ納骨もできないため、警察、区役所等に相談しながら何とか二柱とも先祖の墓所に納骨することができた。

納骨にはT様にも参列して頂き、涙を流して喜ばれた。財産確定のために財産を調べていたら、亡姉の遺産相続もなされていなかったことが判明したため、相続人の確定等相続に関する手続きも進めた。

戸籍には、行方不明の兄が記載されており、その人物の生死を確定しなければ亡姉の相続も出来ないため、本人、甥にその人物が誰なのかと問い合わせたが、二人ともその人の生死を知らず、行方も分からず、最後に姿を確認した時期も分からなかった。

いろいろ手を尽くしたが何の手がかりも得られなかった。亡姉の遺産相続を開始して、T様の財産額を最終的に確定する必要があり、NPOとしては、その不明人物の失踪宣告を申し立てるしか方法がなかったため、その時点で連絡が取れる6名の親族の同意を得て、家庭裁判所に失踪宣告を申し立てた。

失踪宣告が家庭裁判所に認められたため、NPOがT様在住の市役所にその旨を提出して戸籍を確定し、亡姉の相続を開始した。亡姉の相続も無事に終了し、T様の全財産額を確定することができた。

これ以降は、財産管理については、T様の日常的なお金の出し入れが中心になった。並行して行っていた家の整理も、貴重品、重要書類、思い出の品と思われる物品等の分別も済み、身上保護に重点を置けるようになってきた。

ご本人様の身上保護に関しては、お人柄を含め何も分からない状況下での対応にならざるを得なかった。初期の頃は、途切れ途切れであってもT様ご自身から、エピソードが語られることもあったが、徐々に記憶は曖昧さが増してきた。

ケアマネさんからご友人のお話を伺ったので、早速連絡をしてお目にかかることにした。ご友人から語られるT様の人物像は、ずっと専門職で働き、非常に教養のある明るい性格の方のようだった。

他にも、近隣住民の方にもご本人様の人となり、ご家族の話を含めて過去のお話等を伺い、手探りで人物像を想像して、面会を続けた。年賀状やご自宅にあった住所録も活用して人間関係を少しずつ理解していった。入所後にご自宅に届くお手紙にはNPOからお返事を出し、連絡先としてNPOをお教えした。

ご友人たちから時々「T様のご様子はいかがですか」という問い合わせがありますが、現状をお知らせして安心して頂いている。連絡があった旨はご本人様にお教えして、とても喜んで頂いている。直接面会に来られる方々もいらっしゃるが、面会時の様子を職員さんから聞き取り、人物像の参考にさせて頂いたりしている。

特に、T様が語られるできごとについては、そのできごとを単体として理解するのではなく、過去から現在に至るT様の生活歴の中に位置づけて理解するように心がけている。

まとめ

財産管理については、内部監査を経て後見監督人に査閲して頂いた上で、年一度家庭裁判所に報告し、執務の適正さの確保を期している。身上保護に付いても、ご本人様とは月二回の面談を行って、話し相手になり、ご本人様の来こし方に、価値観にじっくり耳を傾け、心身の安定に心がけている。

※本記事は、2021年5月刊行の書籍『地域で安心して暮らすために 市民参加による地域コミュニティー再生へのチャレンジ』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。