第1章 オーバー30歳(over thirty)のクライシス

① オーバー30歳はどんな時期

人気アイドルグループ「嵐」だってオーバー30

人気アイドルグループの「嵐」が、2020年の12月末日をもって活動休止する、という衝撃的なニュースが2019年の年明けに飛び込んできました。歌手としての活動はもちろんのこと、各々のメンバーがタレント、俳優、そしてキャスターとして大活躍です。テレビでその姿を見ない日はありません。人気絶頂期の彼らがなぜ、今、このタイミングでと思った方も多いのではないでしょうか。

5人揃って臨んだ記者会見では、活動休止の理由をこう語っていました。20年間歩み続けてきた芸能界から一旦距離をおいて普通の人生を送りたいとメンバーのひとりが望んでいるからだという。5人で「嵐」だから、ひとりが欠けても成立しないし、ひとりが犠牲になるのなら、彼の気持ちに全員で賛同したいというものでした。

彼らの考え方も友情も素晴らしいと思う。でも、心のどこかで、今の人気絶頂期に、そんなにもあっさりとこれまでのキャリアと決別できるものだろうかと考えてしまいました。彼らは全員30代後半、まさに、皆さん方の年齢です。

ビジネスパーソンなら、プロジェクトを経験させてもらったりして、職業人として、これからの夢や希望を描き始める頃ではないのでしょうか。そのようなタイミングで、新しい人生を選択するでしょうか。なお、ご存じの方もいらっしゃると思いますが、ビジネスパーソンとは、ビジネスマン、ビジネスウーマンに代えて性差を超えた語として、近年、用いられることが多くなっています。

私たちは、「嵐」のことを人気者で何不自由のない生活を送っていると思っています。だから幸せなのか、アイドルにはアイドルならではの苦悩や葛藤があるのか、それについては想像すら及びません。ただ、がむしゃらに目の前の仕事に取り組んでいた20代とは、異なった視点で仕事というものが見えてくるのは、アイドルも私たちも、もしかしたら似ているところがあるのかも知れません。

仕事面に留まらず彼らは30代後半になっても、アイドルの偶像を崩すことなく最近まで全員が独身を貫いていました。ファンにとっては嬉しいことですが、彼らも生身の人間です。仕事でもプライベートでも、30代ならではの葛藤を抱えて生きているのだろうかと、いつもとは少し違った視点でアイドル像なるものを想像させてくれたニュースでした。

※本記事は、2020年3月刊行の書籍『Over Thirty クライシス』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。