私はリュックをお預かりした。

「雨が降っています。滑りやすいので、お足元にお気をつけくださいませ」

そう申し上げ、お客様が濡れないように傘を差し掛ける。

どうやら足が悪いご様子。

ゆっくりご乗車された。

「あら、近くに停めてくださったのね、ありがとう」

以前に私は、歩行困難の方の送迎バスの介助員や、デイサービスの送迎をしていたので、自然とそういう停め方をしてしまう。

いつも通り、行き先を伺い、自己紹介の後、ゆっくりと走り出した。

穏やかな優しいお客様だ。

30分ほどの総合病院が行き先だ。

「この辺りはね、道が狭くて。ごめんなさいね」

「横浜はこんな感じの道が多いので、大丈夫ですよ。お気遣いなく」

その後、お客様はお住まいの辺りの開発時のお話やお孫さんのことなど、いろいろな話をしてくださった。