第一章　3人の出会い

「俺は、何も努力の尊さを否定するんじゃないぜ。ここの教師のように、大して良くもない頭に、どうせ高校時代に塾とやらでギュウギュウと頭に詰め込まれて、たかが知れた学歴とやらを手にして、それを威張るような野郎が嫌いなだけだ。学歴なんて威張れるようなことかよ。成績の良いことを威張るようなアホが嫌いなだけさ」

と言い返した。

だからといって茂津は、自分は勉強嫌いなだけで、人並みに勉強しさえすれば、英語でもなんでも、トップクラスの成績が取れるなどとは言わなかった。勉は、宗のようではないが、赤点（落第点）だけは免れるために最小限の勉強をしたので、クラスの中では中の下ぐらいの成績だった。

茂津は、月曜日から中間試験が始まるというのに、前日の日曜日の午前中に電話をしてきて、面白そうな映画が封切られたから見に行こうと誘ってきたが、勉はさすがに断った。その茂津と成績があまり変わらないことに、勉は良い気がしなかったが、茂津はそれほど勉強しなくても、まずまずの成績が取れるということを一切言わなかったし、自慢したり鼻にかけたりするような態度を見せなかった。勉は、茂津に少しは鼻持ちならないものを感じていたが、憎めないところがあるから、付き合っていられると思うのだった。

梅雨が近づく頃になって、茂津が唐突に切り出した。

「中間試験も終わったしさあ、梅雨に入る前に3人で海の見えるところに行かないか。俺は東京出身だからさ、関東平野の中だけで暮らしてきたようなもんだよ。だから高い山から海を見たことがあまりないんだ。神戸は海と山が近いから、きっと良いところがあるんだろ。神戸に来てまだ1年少ししか経っていないから、良いところをあまり知らないんだ。どこか良いところがあるかい」