トムは残りのりんごを探してまた山道をくだってゆきました。とちゅうでウサギの兄妹に会いました。それぞれ重そうな袋を一つずつひきずっています。きょろきょろしているトムを見てウサギの兄が言いました。

「何か探しものですか」

「そう。りんごを落としたんだ」

トムがこたえると、ウサギの兄妹はがっかりしたように顔を見あわせ、言いました。

「ぼくたち、拾いました。この袋の中にあなたの探しているりんごがあります。家でまっている病気のお母さんに、よいおみやげができた、と喜んでいたところでした。しかし、あなたのものですからお返しします。どうぞ、受け取ってください」

トムはあわててりんごを返して言いました。

「さしあげます。どうぞ、お母さんのところへもっていってあげてください」

ウサギの兄妹はうれしそうにりんごをまた袋にしまうと、その袋をひきずりながら帰ってゆきました。

もうすぐ日が暮れます。あわててトムは残ったりんごはどこかにないかと目を皿のようにして探しました。そのとき草の中からこんな話し声が聞こえてきました。

「母さん、これでぼくたちしばらくくらしてゆけるね。おなかが空いて空いてみんなで死ぬかと思ったよ」

声のするほうに近づいてみると、穴の中でネズミの親子が話していたのでした。テーブルの上にりんごが三個ならんでいました。そしてしあわせそうな親子の顔が見えました。ネズミのお母さんは子だくさんです。二十匹の子どもを養うために一日中走り回ってたべものを探します。それでも自分の分がないこともあるのです。ほっとした顔のお母さんを囲んで、子ねずみたちもしあわせでした。

もうすぐ山は暗くなります。トムはもうりんごを探すのをやめました。トムはしあわせでした。トムの落としたりんごを拾って、きっとどこかで誰かがよろこんでいるにちがいないからです。それに、袋にはまだいくつか残っていました。それを食べたら冬の間はゆっくり眠ってすごそうと思いました。

きっといい夢が見られる気がしました。