歌劇 『雪女の恋』

❖登場人物

雪女 こゆき

姉 ふぶき

里人 弥助

山の神

 

第三場

 

音楽「恋の始まり」。

舞台溶明。こゆきが楽しげに登場する。

 

こゆき お山の下には 何がある

ヒトが住んでる 里がある

ヒトの里には 何がある

田んぼがあって 家がある

ヒトの里にも ゆきがふる

雪やこんこん 雪こんこん

童が遊ぶ 雪こんこん

雪花 散り花 くうるくうると 回り花

つもれつもれ 沢山つもれ

積もったうえにまたつもれ

弥助

どんと押されて 転がった

ころころころころ 転がって

里へ着いたら 雪だるま

ころころ 転がって

里へ着いたら 雪だるま

 

こゆきは、楽しそうに一回りし、ふと立ち尽くす。

 

こゆき…… こゆき こゆき……

谺(こだま)のように くり返し

遠くに消えた あの声

耳にのこっているのは なぜ? 

ああ弥助

鏡のように 澄んでいて

わたしを映した あの瞳

瞼にのこっているのは なぜ? 

ああ弥助

花びらのように 柔らかい

そっとつついた あの唇

指にのこっているのは なぜ?

ああ弥助

 

音楽「妹を思う」。

こゆきは弥助との出会いの「再現」に興じ始める。

姉ふぶきが登場する。こゆきの、はずむような様子を見つめる。

 

ふぶき 愛(いと)しい妹 こゆき

童(わらべ)のような 素直な心

おまえは わたしの宝物

ふぶきとこゆきは 雪女

ふたり姉妹の 雪女

神のしもべの 雪の精

ふぶきとこゆきの 心は一つ

ふたり一人の 姉(あね)妹(いもうと)

山の雪姫 雪の精

愛しい妹 こゆき

童のように 気ままに遊ぶ

おまえが 気がかり 何思う

 

音楽「姉と妹」。

こゆきが「再現遊び」をやめ、ふと佇む。こゆきを見つめるふぶき。

 

こゆき 胸に のこっているのは なぜ? なんだろう このぬくもりは?

ふぶき 胸が ざわめくのは なぜ? なんだろう このひんやりは?

こゆきがふぶきに気づく。

こゆき あっ 姉さん

ふぶき こゆき 何を考えていたの 

こゆき ええ……

ふぶき どんなこと?

こゆき 姉さんは いいわね 人里まで行(い) けて 奥山降りて 里山過ぎて 

人里着いたら びゅうびゅう 吹雪いて 大暴れ おどろく里人 見物できて

ふぶき お上(かみ)の言いつけ お指図よ 遊びじゃなくて お役目よ

里人(さとびと)に 吹雪の怖さを教えるため 人間に 冬のお山に入るなと伝えるためさ

※本記事は、2019年8月刊行の書籍『雪女とオフィーリア、そしてクローディアス』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。