「君たち、そう目くじらを立てるなよ。水田はあれでも、俺たちを励ましたつもりなのかもしれないぜ。良いように解釈し過ぎかもしれねえけどさ。あいつは無能な奴だから、あんな言い方しかできないのかもしれないぜ。それに、教師だってごく普通の不完全な人間だよ。教師に期待し過ぎるのも、教師を信用し過ぎるのも、どうかと思うぜ。教師は全員がりっぱなんだと思う方が、むしろおかしいんじゃねえのか」

と冷徹に言ってのけた。これを聞いた宗は一瞬ムッとして、

「君は水田のことを、良いように受け取り過ぎや。新入生にあんなこと言う奴は許せんのや」

と応じた。勉は内心、茂津を”しゃくにさわるやっちゃ(奴)”と思ったが、頭を冷やしてみると、茂津の言ったことが全くの間違いとは言えないように思えた。勉は、

「僕も宗君と同じでムカムカしたけど、今思うと、茂津君の言うことも全面的に否定できひんなあ」

と、言うと宗は、

「もしかしたら、そうかもしれん。しかし、俺は水田が言うたことは許せん。水田からは生徒を励まそうという気持ちは感じ取れなかった。生徒を侮辱して楽しんでるように感じたで」

と怒りを込めて話した。

「君は厳しいなあ。まあ、そういうところもあるやろとは思う」

と勉が応じると、2人をこの話からそらすように、茂津がニヤニヤしながら勉に尋ねた。

「ところで、別当君。君は勉強嫌いのくちかい?」

「いやなことを聞くなあ」

「じゃあ、勉強が好きか?」

またも意地悪そうに聞いた。

「勉強が嫌いやから、勉強せんかった。おまけに頭も良うないからここにおるんやろ」

勉がややムキになって言うと、茂津と宗は声を出して笑った。それを見て勉もつられて笑いだした。

※本記事は、2021年3月刊行の書籍『海が見える』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。