6月7日(土)

ひょんなことから縁ができ、ある超能力者のような方と会うことになった。歩けなかった人を歩けるように治したのをこの目で見たと、U君が教えてくれた先生だった。私は半信半疑で、島原の展望台にあるきぬいと峠というドライブインへと向かった。

その先生は、年の頃は37〜38歳。ロングヘアーの普通の人のように見えた。しかし、話を聞くにつれ、また善一さんに治療を施してくれるにつれ、彼女の目つきの鋭さ、物言いのシャープさ、論理的で科学的な説明を聞くにつれ、この女性はただものではないということが次第にわかってきた。

半信半疑で治療を受けたのにもかかわらず、一通りの治療の後、善一さんが試しに歩いてみると、治療を受ける前より明らかに速く歩けたのだ。私はびっくりしてしまったが、信じられなくてボウッとしてしまった。でも! でも、確かに術前より状態が良くなっている! まったく信じられないことが起こっていた。

私は超能力や奇跡をまったく信じたことはない。聖書に書いてあるキリストの奇跡でさえも信じていなかった。でも、今は信じられる。きっとキリストも、あの大分の先生と同じように、掌で神の力を伝えることのできる人だったのだろう。

世の中には理屈で説明できないことが多くある。現在の科学で解明できない不思議な力が絶対存在しないものだと誰が断言できよう。善一さんの病気は約100年前に発見されたが、治ったという症例は一つもない。それは、この間出席したALS総会で、現在の一流の医師たちが言明した。だから、西洋医学ではもう見放されたようなものだ。

なのに、善一さんは、あの特別な治療から1週間でおよそ1ヵ月前の状態に戻って、つまり良くなっているのである。一歩一歩たどたどしく、しかも3、4歩毎には休憩を入れなければ進めなかった善一さんが、今は約15メートルの距離を一人で杖もなしに、休憩さえ入れないで歩けるのだ! これが奇跡でなくてなんであろう。

私はもうすっかりあの「先生」を信じてしまった。何でも言われるとおりにやろうと思っている。玄米食も、ゴマ塩も、無農薬野菜のおかずも、ビワの葉の風呂も、朝晩のマッサージも、すべて彼女の言うとおりにやっている。1ヵ月かあるいは3ヵ月もすれば結果が出るという。今月の終わりくらいにもう一度診てくれるという。その日が待ち遠しい。

毎晩私が電話で先生に「気」をもらって善一さんにマッサージをするものの、やはり不慣れでもあるし、なかなかツボに入らないこともある。治してやるぞ、と念を入れてやるのだが、そこは凡人の悲しさ、つい雑念が入り、うまくいかないこともあるのである。だから、とにかく雑念を捨てて、今は善一さんを治すことに全力を注がねばならない。それができるのは、先生の「気」を借りることのできる私一人なのだから。

※本記事は、2021年3月刊行の書籍『ALSと闘った日々』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。