「息子をどうにかしてください!」と言ってきたのは、母親でした。しかし、彼はこれまで仕事に就いたことがなく、ずっと無職です。そんなお金は持っているはずがありません。ではどうしていたのかというと、両親が乞われるがままにあたえ続けていたのです。

私がびっくりして「なんでお金をあげちゃうんですか!?」と聞くと、「〇ちゃんが、かわいそうだから」というのです。子どもの頃から「愛情をもって育ててきた」とはいえ、これは甘やかし以外のなにものでもありません。しかも、息子はもう40過ぎ……子離れのタイミングを逸したままズルズルと今日まできてしまった結果でした。

両親が意を決して「もうお金はわたせない」と言うと、息子は狂ったようにわめき、手あたりしだいにものを投げ、暴力をふるいます。かわいいわが子に手を上げられる悲しさはいかばかりか。そうして「今度だけ」「これが最後」を繰り返してしまうのです。

彼の場合は人間関係に依存するタイプで「恋愛依存」「DV」「家族依存」の複合型です。どうしてこのような依存症になってしまったのかを探っていくと、やはり両親の育てかたに問題があったと考えざるをえません。

また、依存症者にお金をあたえると、病状をますます悪化させてしまいます。この男性の場合は両親がコツコツためた資産をほれた彼女に湯水のごとく使ってしまいましたが、このまま放置していれば借金の保証人にさせられて、さらに何千万円ものお金をむしり取られたかもしれません。

専門知識とノウハウをもった精神科医や福祉関係者が第三者として介入することで、問題を解決したり、少なくとも問題を起こさせないようにすることができます。家族の依存症で悩んでいるのなら、メンタルクリニックの診断を受けることをおすすめします。日本ではまだ依存症に取り組むデイナイトケアは多くないのが現実ですが、これから社会全体の問題として考えていく必要があります。