また、東京の街や電車の駅など、すべて健康な人にばかり照準を当ててつくられているのだなと、角度を変えて見ることができるようになったのも今回の収穫の一つです。

私一人で東京へ行っていたら、これほどのことを感じることはなかったでしょう。そういう意味で今回の旅行で善一さんの病状をいやというほどはっきり確認させられ、妻として義務や責任をまだまだ果たしていなかったのだなと反省しました。

症状がわずかずつでも進んでいるのだとすれば、食い止めるよう努力するとともに、一日一日を有意義に楽しく生きていかねばならないと思います。

不愉快な毎日を送ることは時間がもったいないばかりか、病気の進行を進める危険性があるのです。善一さんがいつか、テレビカメラがあっても顔を上げていられる、否、むしろ積極的にテレビに出てもいいという気持ちになってくれればと思います。

そこまで吹っ切れれば病気のほうが退散していくような気がします。あるいは難病患者のために役立つことを積極的にやろうという気持ちになってくれたら。

そこまで気持ちが前向きになれたら、きっと毎日ももっと楽しいものになるのではないでしょうか。難病にかかっているとはいえ、今は立派に仕事ができています。心の持ちよう次第で幸せになれると思います。

長い手紙になりました。お父さんお母さんには、善一さんが喜ぶ、心和む話をしていただきたいのです。今日は妹のA子さんの結婚のことだけ話題にしましょう。楽しく。

※本記事は、2021年3月刊行の書籍『ALSと闘った日々』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。