サルを使った面白い実験があります。空腹のサルに、サツマイモを400g与えると、サルはすぐに食べ始め、100gほど食べると、ピタッと食べるのをやめ、それ以上食べない状態になります。満腹中枢から「もう食べなくてもいいよ」という指令があるからです。

このように、常に飢餓状態にある野生動物は本能的に自分の体重を適切な値にコントロールできるのですが、飽食の環境に暮らす私たちやペットたちは、この本能を見失ってしまっているのです。昔から腹八分目ということわざがありますが、まさにそれが私たちを健康に保つ秘訣なのです。

また、人間の場合、高齢になればなるほど肥満者は増加傾向にありますが、野生動物は年齢を重ね、活動量が落ちると、むしろ体重が減少します。

定年になって、仕事がなくなると、活動量が落ちるのにもかかわらず、時間の余裕が出て、テレビを見ながら、お菓子や果物を食べるなど間食が増える傾向にあるようです。「甘いものは別腹」なんてことわざもあるくらいで、あとでもふれますが、糖質の過剰摂取が肥満につながっています。

高齢になってから肥満になって、糖尿病や高血圧を発症し、先ほど述べたような薬をいっぱい飲まなければいけない事態になっている患者さんは非常に多いです。

このような患者さんは、自己管理ができていないという意味で「やぶ患者」と言わざるを得ないのではないのでしょうか。元来、人間も野生動物であったはずです。

本来、人間に備わっている「本当にお腹がすいているときだけ食べて、お腹がいっぱいになったらやめる」という、生きていく上で必要かつ十分なエネルギー量を食事でとるような賢い生き方を、終生続けていきたいものです。

※本記事は、2021年4月刊行の書籍『やぶ患者になるな!』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。