ある日、下校時に茂津と顔を合わせたので、仕方なく一緒に帰ることになった。バス停まで歩きながら、勉は自分から何も話さなかったが、気まずい空気に耐えられなくなったように、茂津の方からごく無難に尋ねてきた。

「家はどこ?」

「王子動物園のすぐ北にキリスト教系の女学校があるやろ、そのちょっと西の方が僕の家や」

「そうかい、僕の家はそのキリスト教系の女学校の北の方だよ」

「わりと近いなあ」

勉が言うのを聞いて茂津は微笑んだ。一緒にバスに乗りこんだが、それから話は弾まなかった。しかし、彼の表情や話し方から、予想していたよりは、感じが悪くないと思った。

もう一人は宗満という奴で、クラスでは勉の少し前の席にいた。トイレで偶然隣になり、なんとなく言葉を交わしたのがきっかけだった。

「この学校はどうや?」宗が用を足しながら尋ねてきた。

「そうやなあ、来なかったらよかったとまでは、言わへんけどなあ……」

「僕もそんなとこや。幻滅というほどではないけど、それに近いな。中学3年生に戻れるもんやったら、戻ってやり直したい」宗は顔をしかめながら呟いた。

勉は宗がいたって真面目そうで、あらゆることを突き詰めて考えてしまいそうなところがあるように感じた。

※本記事は、2021年3月刊行の書籍『海が見える』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。