第一章 3人の出会い

四月も終わりに近づく頃、勉も話をする相手に出会った。

勉はもともと人見知りするというよりは、むしろ、人間嫌いという傾向があった。幼いころ、悪ガキどもからいじめに遭ったり、親友と思っていた奴に裏切られたりしたことが、多かったからである。そんな奴らなら、こちらからすり寄って、頭を下げてまで友達になりたくないと思っていた。友達になれるような奴に恵まれなかったのかもしれないが、友達らしい友達はいなかった。しかし、寂しいと思ったこともなかったし、自分から進んで人に話すこともなかった。勉には好きな“海”がいたのである。それで十分だった。

そんな勉になんとなく話をするようになった一人は、下校時によく顔を合わせるようになった奴で、茂津有人という男である。教室では勉の右横の席だったが、どちらからも話しかけたことはなかった。彼の言葉やしぐさから関西人らしいところを感じず、いかにも東京的田舎者のキザ野郎だというのが印象だった。