令和の幕開け

アベノミクス効果で日本経済も上昇傾向になって約7年、2019年は日本にとって特別な年でした。4月1日「平成」に代わる新元号「令和」を発表し約200年ぶりの譲位で新天皇が即位されました。またラクビーW杯も開催し、大阪でも主要20国・地域首脳会合も行われました。

景気は10月に消費税率が8%から10%に引き上げられ、アベノミクス効果もそろそろ下降傾向になってきました。

ただ、海外からの訪日観光客の大幅な増加によるインバウンド効果もあって観光業界や一部小売業は活況を呈していました。特に日本有数の観光地や東京、大阪の大都市には観光客が押し寄せ、電化製品や医薬品などのお土産品を買って帰りました。そのさまは数十年前、海外へ押しかけた日本人の団体客を彷彿とさせました。

2020年(令和2年)の日本経済は米中貿易摩擦の長期化にともなう経済の減速や、韓国との関係悪化の影響により、当面は輸出が停滞すると懸念されました。しかしながら7月の東京オリンピックやパラリンピック関連の需要やインバウンド消費による内需に支えられてゆるやかな成長が継続すると思われました。

ところが2019年(令和元年)12月に中国武漢市を中心に発生した「新型コロナウイルス感染症」が短期間で全世界中に拡散されるというまったく予期せぬ出来事が起こりました。その結果、東京オリンピックやパラリンピックを2021年まで延期するという非常事態になりました。

新型コロナウイルス感染症の蔓延で世界の経済活動が委縮した結果、原油価格まで影響を受け、4月20日のアメリカニューヨーク・マーカンタイル取引所で原油価格の指標となる米国産WTI原油の先物価格(5月物)1バレルがマイナス37.63ドルと史上初めてマイナス価格で取引を終えました。その理由は新型コロナウイルス感染症を抑え込む対策で世界経済が停滞してきており、原油を貯蔵するスペースが限界に達しつつあったからです。

国際通貨基金の試算では財政均等に必要な2020年の損益分岐価格はサウジアラビアなど中東の産油国で1バレルが70~90ドル、アメリカのシェール開発企業は40ドル以下なら大半が赤字になるといわれています。逆石油ショックになる可能性が出てきました。

国の収入を原油の輸出に頼っている石油産油国の経済基盤をゆるがし、財政危機が世界の金融市場を混乱し、世界経済をさらに悪化させる可能性が高くなると思われました。その後の原油価格の動向が注目されましたが、9月になると1バレルがほぼ40ドル前後まで回復しています。

消費者にとって原油価格は安いほうが良いですが、世界経済にとってはマイナス要因にもなることがあります。

日本においても4月7日に新型コロナウイルス感染症対策本部から当該ウイルスの全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがあるとして緊急事態宣言がなされました。緊急事態措置を実施すべき期間・区域として、5月6日までの間、埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県・大阪府・兵庫県・福岡県が公示されました。

その後緊急事態宣言は全国に広がりましたが海外の主要都市のロックダウンと規制力がまったく違い、日本は日本らしい性善説にたった規制、つまり自粛要請です。これで国民の外出が減少して効果があれば日本人の優秀性が世界に認められると思います。

しかし、5月6日になっても感染者の数は予想どおりに減少せず緊急事態宣言を5月末まで延期することに決定しました。そして5月25日になり首都圏を含め日本全域で緊急事態宣言は一応解除されました。その結果は残念ですが収束することなく7月からは全国に感染者がさらに拡散しています。

このような状況下、2020年8月に安倍首相が持病悪化のために辞意を突然に表明し、連続在職日数で歴代単独1位の長きにわたった政権が終わりをつげました。新型コロナ禍のなか、日本経済の立て直しや憲法改正、ロシアとの平和条約など多くの課題が新体制にゆだねられます。