「カフェ・ドゥ・マゴ」パリ店 VS 東京店

ドゥ・マゴはパリのサン・ジェルマン・デ・プレにある老舗カフェです。

一八八四年の創業以来、ヘミングウェイやピカソなどの文豪や芸術家が足繁く通ったことでも知られており、パリを舞台とした多くの映画にも出て来ます。

八十年代の終わり、東京渋谷に映画や演劇の総合施設、文化村ができて、そこに「カフェ・ドゥ・マゴ」がオープンした時は、本当に嬉しかった。半地下なのに明るい、ビルの中の吹き抜けのオープンテラス。小ぶりの丸テーブルに細いスツール、あちこちに植栽された花と緑。ああ、これがパリの香りかと。そして今は、文化村の美術館や映画館に行ったついでに、しょっちゅう寄っています。

友人とパリのカフェの話題になって、改めて、数年前に行った時のドゥ・マゴ・パリ店と東京店とを比べてみました。

双方で食べた、タルト・タタンに焦点を絞って。

パリのドゥ・マゴ本店は、パリでもごく古いサンジェルマン教会の向かいにあり、オープンテラスはいつも沢山の人で賑わっていて、そりゃあお洒落なカフェです。タルト・タタンというのは素朴なアップルパイのようなお菓子ですが、パリ店のそれは甘すぎ、大きすぎ、見た目も煮リンゴのオバケみたいで驚きました。タルト生地が底に僅かにありましたが、薄すぎて味も分からないくらい。添えられたアイスクリームも甘すぎ、私はどちらも完食できず。これとコーヒーを頼んで、チップを含めて二十ユーロ位だったか。水は勿論有料です。

ギャルソンのサービスは、たまたまかもしれませんが、あまり感じのよいものではありませんでした。

夫と私は奥の暗いスペースに案内され、見ると東洋系の客は中に、白人系の客はオープンテラスにと分けられている(欧米のカフェでは圧倒的にオープンテラスの方が人気なのです)。外の席が空いているようだが、と言ってみましたが、予約が入っているからと拒否されました。しかし我々が出る時も、空席のままでした。ついでに地下のトイレも有料です。

東京店のタルト・タタンは小ぶりで甘すぎず、私にはピッタリ。小さく添えられた生クリームが、リンゴの甘酸っぱさ
とまろやかに調和している。コーヒーとセットで一四〇〇円位。そしてサービスはにこにこテキパキ、何度も水を注いでくれ、素晴らしい! トイレは勿論無料で、綺麗さはもう、言うまでもなく。

という訳で「カフェ・ドゥ・マゴ」に関しては、私は東京店の方を推します。

感じ悪かったパリのギャルソン氏、貴君のせいです。

パリ店
東京店