東京圏への人口移動は、1950年から数えこの60年間で実に3倍を超え、3700万人に達しています。日本人の三人に一人が東京圏に住んでいます。いかに東京に魅力があるとしても、三人に一人が東京圏に集中するというのは明らかに異常です。

1950年から現在まで日本の人口は約50%増加しましたので、都市圏人口は約1700万人に膨れ上がり、残りの約2000万人は地方から東京都市圏に移動したことになります。

都市で生活してきた人と地方で生活してきた人の大きな違いは、知識と体験の量です。創造をするためには、豊富な知識とさまざまな体験が必要です。地方では、知識量も体験量も限られているため創造的な人生を送ることができません。

停滞した人生に人は魅力を感じることができません。したがって、人は地方から東京に向かったのです。もし、都市と地方の知識量と体験量に違いがないとすれば、必ずしも人が東京に向かったかどうかわかりません。

東京には魅力が多いのですが、大きな問題があります、生活が楽ではありません。ちょうど発展途上国の人が豊かな生活を夢見て日本に働きに来たものの、生活費の高さに驚き、貧しい生活を余儀なくされていることと似ています。

しかし、地方に戻れば生活費は下がるものの、収入も大きく下がり、結局人は東京で暮らす以外に道がありませんでした。ところがオンライン社会が到来したことで、事情が大きく変わってきました。

東京の仕事をしながら地方のゆとりを享受する、つまり、都市と田舎のハイブリッドスタイルが実現できることがわかったのです。あるべきライフスタイルを求めて、地方に移住する人が多くなるかもしれないのです。東京を離れる企業も多いでしょう。

企業活動のコストが下がる、つまり損益分岐点が低くなり、企業は非常に強くなります。経営にゆとりが生まれ、さまざまなチャレンジができるようになります。

今回の新型コロナで、特に大きな社会問題になったのは家賃です。個人でも住宅コストが下がれば、生活にゆとりが生まれ、人間らしい生き方ができるようになり、人生が前向きになります。

都市から地方に移住したこうした人たちが、地元の人々と交流を深める中で、都市の知識と地方の経験が融合し、新しい発見が生まれ、地方活性化につながる可能性があります。

地方を活性化させるのは人材です。人と人が出会い、対話が生まれれば、創造がはじまるのです。このようにオンライン革命で、東京や都市の知識が人とともに地方に移転し、知識格差が小さくなります。地方は都市の知識をインバウンド化することで変貌を遂げていけるのです。

※本記事は、2020年9月刊行の書籍『ワークスタイル・ルネッサンスがはじまる』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。