漫然とした薬の投与は体によくない!

では、薬の治療は手術とは異なり安心できるのでしょうか?

決してそうではありません。薬にもさまざまな副作用の危険があります。特に2種類以上の薬を内服していると、個々の薬では見られない作用が表れたり、それぞれの薬の効き目が強くなったり弱くなったりする「相互作用」をきたすことがあり、注意が必要です。

厚生労働省は、2018年5月「高齢者が医薬品の多剤服用から健康被害を受ける問題がある」として、減薬を念頭に医薬品の処方を見直すよう医療機関などに求める方針を決定しました。

具体的には6種類以上の薬を内服していることが目安となっており、75歳以上の3割弱が10種類以上の薬を飲んでいるというデータもあります。

特に高齢者では肝臓や腎臓の機能が弱っているため、若い人に比べて医薬品の血中濃度が上がりやすく持続しやすいので、副作用が表れやすくなります。

しかし、高齢になると生活習慣病(その名の通り、生活習慣が原因で発症する疾患のこと。偏った食事、運動不足、喫煙、過度の飲酒、過度のストレスなど、好ましくない習慣や環境が積み重なると発症のリスクが高くなる)で病院・医院に通院する患者さんが大多数で、歳をとればとるほど内服薬が増加していく傾向にあります。

例えば糖尿病で3種類、高血圧で2種類、脂質異常症で1種類、脂肪肝で1種類というように、多数の薬を飲んでいる人をよく診察します。このように、漫然と薬を飲むことは決して体にとってよいことではありません。

そして、自分が何の薬を飲んでいるかをいまひとつ把握しておらず、医師に処方されたからという理由で、何の疑いもなく、薬を飲み続けている人も多数います。

また最近、配合錠と呼ばれる薬がたくさん発売されているのをご存じですか?

配合錠とは、何種類かの薬の成分を一つの薬にした飲み薬のことをいいます。組み合わされている成分は、似た効果を持ったもの同士や、異なる効果を持ったものなどさまざまです。

このような配合錠のメリットとは、

①飲む薬の数を減らすことができる、

②飲み忘れを防ぐことができる、

③単剤よりも効果を高めることができる、

④薬剤の値段を抑えることができる、

などが挙げられます。

しかし、例えば高血圧の配合錠を飲んでいる方を診察して、「2種類の血圧の薬を飲んでいますね」と確認すると「1種類です」と言って、配合錠であることを確認しても、この配合錠の配合のことをもともと知らないのか、忘れてしまったのか、全く理解していない人ばかりです。

自分が日々飲んでいる薬なのですから、きちんと把握していない人はやぶ患者ということになるでしょう。

また、よく効く薬ほど、副作用が多く見られる傾向にあります。

痛み止めの薬を頻回飲むことで胃潰瘍いかいようができてしまったり、脳梗塞のうこうそく心筋梗塞しんきんこうそくの予防のために血液をサラサラにする抗血栓こうけっせん薬を内服しているために消化管出血(胃や腸から出血すること)をきたしてしまったり、糖尿病の薬が効きすぎてしまって低血糖による意識障害で救急搬送されてくるようなことは日常診療ではよくあります。