そう言うと、彼女は私の手を握った。

「いえいえ。私は美人じゃないですよ。母に子どもの頃から『器量が悪いんだから笑顔で愛想良くしなさい』ってよく言われましたよ(笑)」

「目が大きくて美人さんですよ〜! タクシードライバーなんて、かっこいいですね」

「(笑)よかったら、タクシードライバーになりますか? 紹介しますよ」

「わあ〜! 美人さんと働きたい! あ……でも、私免許なかったんだ」

「(笑)(笑)(笑)(笑)」

誰もいない店内。二人の笑い声が響いた。

「また来ますね。寒いから風邪引かないようにお気をつけくださいね」

「はぁい! 運転手さんも、ガンバ!」

満面の笑顔に心を和まされた。素敵なヒトだなって思った。私も負けていられない。頑張らなくちゃ!

笑顔は人を幸せにする。外は風が冷たく、容赦なく私に吹き付けた。だが、心は温かい。パンを頬張り、笑顔が素敵な彼女のいるコンビニを後にした。

「一緒に頑張ろうね」

私はそう呟いた。不思議と穏やかな気持ちでいられる夜だった。

 
 
※本記事は、2021年1月刊行の書籍『女タクシー日記』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。