運転手のブレイクタイム

夕方から帰宅される方のピークが過ぎ、落ち着く頃。やっと、ひと息つける時間帯だ。

私の場合は21時頃だろうか。トイレと、少し口にするための食料を買うため、コンビニに立ち寄った。大体、駐車場が広い店舗を選ぶ。タクシーは目立つし、社名があるので、少しでもクレームを受けないように気を配る。

コンビニにいらしたほかのお客様が「停められない!」とならないようにだ。

車中とはいえ、食べ物は慌てて食べたくはない。なので、なるべく駐車場が広い、迷惑にならないコンビニを選ぶ。駐車場所もできれば、店舗入り口から遠い場所にする。

22時。あるコンビニに駐車。夜のコンビニは明るいので、ホッとする。ここへは、週に数回ほど利用させてもらっている。自動ドアをくぐった。

「いらっしゃいませぇ〜⤴」

カン高い声の出先を見ると、女性の店員さんがカウンター内にいる。

「おトイレをお借りします」

「どぉーぞぉー!」

女性の店員さんは、笑顔で応えてくださる。綺麗なトイレ内だった。タクシードライバーになり、トイレを拝借するために、あちこちのコンビニに行く。ココはいつも綺麗が保たれている。

多くの人が利用するトイレを、このように綺麗にかつ、無臭で保つのは大変だと思う。店長さんの指示が行き届いているのだろう。

店内には、ほかのお客様はいない。店員の女性はカウンター内で作業していた。パンを一つ、レジに持っていく。

「ありがとうございます〜!」

すぐにレジに来てくださった。30代くらいの女性。笑顔が素敵だ。

「おトイレ綺麗ですね。気持ちよく利用させていただきました。ありがとうございます」

「こちらこそ、そんなふうに言ってくれて嬉しいですー! タクシードライバーさんですか? 何時までお仕事ですか?」

「2時か3時まで走っていますね。お互い大変ですけど、頑張りましょうね。あと、ホットコーヒー一つくださいな」

「コーヒー一つですね。私、独身なんです。だから、食べていくために働かなくちゃいけなくて」

「そうですね。皆、生活のために働いているんですよね。大変ですよ。私もそうですよ」

「結婚も諦めています。出会いもないですし。美人じゃないし」

「初めて会った方に、失礼かもしれないけど……笑顔が素敵で、愛嬌もあって、凄くいいと思います。接客業だし、ココだって立派な出会いの場じゃないですか! きっと素敵な方と出会えますよ!」

「わぁっ! 美人さんにそんなふうに言われちゃった! 嬉しい!」