7.主文

被告人を罰金二万円に処する 右罰金を完納することが出来ないときは金500円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。訴訟費用は被告人の負担とする。

8.判決理由(罪となるべき事実)被告人は、八王子市〇番地において〇病院(精神科、外科、内科)を経営管理していた医師であるが、

第一、昭和四十一年一月二十五日、前記病院の入院患者A女(63才)が屋外療法実施中行方不明となり、その所在を捜索していたところ、

(1)同月二十七日午前7時ごろ前記病院の北方約500メートルの同市南浅川4224番地国有林45班区内の沢の中で右A女が死体となって発見され、同病院に搬入された後、同日午前11時ごろ同所において右死体を検案した際、右死体に異状があると認めたにも拘らず24時間以内に所轄警察署にその旨届出をしなかった。

(2)同月二十八日右病院において、八王子市長〇に対し提出する前記A女の死亡診断書を作成するに当たり、同人が前記のごとく国有林内において死亡したものであることを知悉しながら、同病院事務長〇と共謀の上、同人においてことさらに死亡場所を「東京都八王子市南浅川町〇病院」と記載して同年一月二十八日付け被告人作成名義の死亡診断書一通を作成し、もって医師として公務所に提出すべき診断書に虚偽の記載をした上、これをその頃同市役所浅川支所において、同支所戸籍係係員に対し、情を知らない〇を介して恰も真正に成立したものの如く装ってA女の死亡届とともに提出して行使した。

第二、法定の除外事由がないのに拘らず、同年三月一日ごろから同年四月十一日ごろまでの間、右病院において、医業を行う病院の管理者として同病院に医師を宿直させなかったものである。

(証拠の標目)省略の適用)判示第一の(1)の所為につき、医師法33条、21条同(2)のうち虚偽診断書作成の所為につき、刑法60条、160条、罰金等臨時措置法2条、3条、同行使の所為につき刑法60条、161条1項、160条、罰金等臨時措置法2条、3条、右牽連犯につき、刑法54条1項後段、10条(重い虚偽作成診断書行使罪の刑をもって処断し、所定刑中罰金刑を選択する。)同第二の所為につき医療法74条1号、16条併合罪につき、刑法45条前段、48条2項換刑留置につき、刑法18条訴訟費用につき、刑事訴訟法181条1項本文

※本記事は、2020年5月刊行の書籍『死体検案と届出義務 ~医師法第21条問題のすべて~』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。