オープニング

「ゲーム」と「子育て」の奇妙な共通点


まず始めに、なぜ「ゲーム」と「子育て」を結びつけて考えたのか? から説明していきます。

奇妙に思われるかもしれませんが、ゲームをつくっている側の目線で見ますと、意外とシンプルなところでゲーム制作と子育ては似ています。

それは、ゲームはユーザーに○○はお子さんに、「やってもらう」という点です。自ら「やる」のではなく、誰かに「やってもらう」ということは、自分でコントロールをすることがより難しくなるものです。ゲームのことがよくわからない親御さんでも、子育てで考えれば思い当たる節があるかと思います。

自分で「やる」ほうが早いですし、簡単だと感じることが多いのは明白です。一生懸命「やってほしい」のになかなか夢中になってやってくれない、お子さんに手伝ってほしいと思いながらも説明が面倒だから親御さん自らでやってしまう、なんてことは日々の生活で普通によくあることです。

ゲームも同じで、つくっている側がプレイする分には支障も少なくスムーズに進められます。

内容を知っているので当たり前のことですが、「やってもらう」側はその当たり前を知りませんし、理解を深めたり上達することが求められるので、より難しさを感じてしまいます。

「やってもらう」障害を乗り越えて、数多くある娯楽のなかから選んでもらうためには、大きな工夫が必要です。そのため、技術の進歩や流行りに合わせる以外にも、ゲーム制作には多岐にわたる試行錯誤が求められ行われています。

ではなぜ、そんな「やってもらう」ゲームが人を夢中にさせ、娯楽として飽きられずに「やる」を促すことができるのか? その理由はシンプルに、ゲームは「面白い」からだと考えます。

ただ、この「面白い」という言葉は深い意味や多様性を持っていて、一筋縄ではいきません。何をもって「面白い」と思うのか、娯楽をつくっている人の多くが明確に仕組みを説明することができないと思います。それができれば、ヒットしか生み出さない錬金術師のようなクリエイターがいることになります。近い方は、ごくまれにおられますが……。

では、ゲームがお子さんたちに「面白い」と受け入れられているのはなぜでしょう?

ここでゲームの基本的な流れを、簡単に説明します。

ゲームの基本的なサイクル
0 |さわってもらうために「興味」を持ってもらう
1 | ゲーム内の「ルール」を理解してもらう
2 | 簡単な操作から始めてもらう
3 | 簡単をクリアするまでトライしてもらう
4 | 簡単を成功することで「達成感」を得てもらう
5 | 少し難しいことに挑戦し、「自発的」に進めてもらう
6 |「上達」を感じ、より難しいことに挑戦してもらう
7 | 6までを繰り返し、エンディングを目指してもらう

いかがでしょうか?

「〜してもらう」ばかりが並んでいて、十分に面倒そうに見えます。と同時に「自発的」に進めてほしいなど、親御さんがお子さんに「やってほしい」○○の流れと近いと感じないでしょうか? ゲームは、数多くの「やる」をクリアしてもらい進めています。

私はゲーム制作者でありながら二児の父親でもあったため、このサイクルが似ていると感じたとともに、ゲームづくりも子育ても、ウンウンうなりながら必死に考えるだけでは答えが出ないという点も似ていると感じました。

考えすぎると行動は固まりますし、仕掛けなければ結果は変わりません。そして、ゲーム制作の場合では、制作者の「やる」を増やすことで、数多くのプレイヤーに「やってもらう」ことへ近づけていきます。子育ても同じではないでしょうか。親御さんのお子さんへの仕掛け方や考える視点が増えると、親御さんが「やる」ことも増えてきます。

これから説明する視点や考え方を意識して自分の子どもたちと接するようになってから、私にとっての成功・失敗の結果はいろいろありましたが、やり取りは確実に面白くなってきました。

自らの子育ての指針として大きく役立ったとは思っていますが、本著でまとめた考えがベストだとは思っていません。とはいえ、お子さんのやる気が出るのを待ってイライラするより、自らが仕掛けて反応を見ていくほうが日々を前向きに進められます。「やってもらう」側にやる気がないなら与えればよい、と考えるようになるのです。

ゲームはもともと生活に必須のものではない娯楽であり、試行錯誤や振り向いてもらう努力が常に必要だと考えています。さまざまな娯楽が増えた昨今、特に意識されるようになったことは、「良くできている」ものをつくるのではなく「売れる」もの、つまりは「面白い」商品をつくることが挙げられます。それに合わせて、ゲームの制作現場では明確になった指針があります。

それは、

「一目見たら、その面白さがわかり、手に取れば夢中で遊べる」

です。この言葉が子育てにどう役立つのかまだよくわからないとは思いますが、これから説明するゲームから考える子育てを知ってもらう上でも大きな軸になる言葉ですので、ひとまず頭に入れてもらえればと思います。

ポイントまとめ

お子さんに「やってほしい」〇〇と「ゲーム」には、

「やってもらう」という大きな共通点があります。

お子さん自らやる気を持って高みを目指して進むには、

それを親御さんが、導いたり支えたりすることは重要です。

その手段となる親御さんの「やる」ことについて考えたり、

効果的に進められるように工夫するためにも、

ゲーム制作で仕掛けて考えていることは、

「やってもらう」側の大きなヒントにつながると考えます。

「一目見たら、その面白さがわかり、手に取れば夢中で遊べる」

を軸に考えていきましょう。

※本記事は、2020年4月刊行の書籍『ゲームは子育てを助けられる ゲーム制作から考える子育て攻略本』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。