このように自分の症状を軽視するような人は、残念ながら「やぶ患者」と言わざるを得ません。

普段と異なる何らかの症状が出るということは、体が警告を発しているようなものだと考えてほしいと思います。

もし病院を受診して、何事もなければ、それはそれでいいのです。

車に例えれば、警告ランプがついているのに、それを無視して運転を続けるようなものです。

車なら心配で、すぐにディーラーに連絡をとるのではないですか? 自分自身の体なら、なおさら自分の体の警告(症状)に注意を払わなければいけないと思います。

また、便を口から吐くような症状のため救急搬送される方がいます。

そのような方の中には、CT検査の結果、大腸がんによる腸閉塞という診断になる人がいます。

詳しく病歴を聴取すると、「ずいぶん前から血便があり、ここ最近は便秘がひどくなってきて、大腸がんになってしまったと思いましたが、病院に行くのが怖くて受診しませんでした」というような方もいます。

まさに「臭いものに蓋をする」姿勢で、前に述べた病状を軽視する人よりも、さらに重度の「やぶ患者」と言わざるを得ません。

車で言えば、警告ランプが点灯しているどころではなく、ハンドルが思うように動かないのに、運転を続けるようなものです。そして、最終的には交通事故を起こしてしまい、修理工場に運ばれてくるといった具合です。

みなさんも想像できるように、このような方の大半は、病院を受診したときには、病状がかなり進行し、手の施しようのない状態になっています。病気を恐れるあまり、さらに恐ろしい状態まで病気が進行してしまうのです。

後手後手になってしまった、まさに負のスパイラルに陥った状態で、日常診療をしていると、他の病気でもしばしば見られます。

やはり、普段と異なる症状が出たなら軽視することなく、早めに病院を受診する必要があります。

後述しますが、がんなどの内臓疾患は、症状が出るときにはすでに病状が進行していることも多く、人間ドックや検診を受けて、無症状のうちに早期発見・早期治療を行うのがベストです。

病気においては、後手に回るのではなく、先手先手で対処していくのが得策であることをみなさんには認識していただければと思います。