医療過信もやぶ患者をつくる

医療不信とは真逆になりますが、医療過信も決して好ましいとはいえません。

医療過信とは、「病院にかかっているから、健康は担保されている」と考え、完全に自分の医療を医師まかせにしていることをいいます。

例えば、私が外来で診察している患者さんに、他の医師から処方された薬について、

「この薬は何の病気に対して飲んでいるかご存じですか?」

とお聞きすると、半数くらいの患者さんが

「わかりません。先生から処方されたので、必要な薬だと思って飲んでいます」

と答えます。嘘みたいな本当の話です。何の薬かも知らずに薬を飲んでいる人が多数いるのです。

どうしてこのようなことが起こるのでしょうか?

一つの大きな理由としては、患者さんが医師を完全に信頼して、医師の言う通りにしておけばいいと思い、自分の健康状態に関心を持っていないからだと思います。

私は残念ながら、このような患者さんはやぶ患者だと思います。

例えば、糖尿病の薬が追加で処方されそうになった場合、「どうして薬が追加になるのでしょうか?」「食事療法を改善することで、薬を飲まないで済むことはないですか?」「この薬を飲むことで副作用は起こりませんか?」など、医師に質問がわいてきて当然だと思います。

そういうときはぜひ医師とコミュニケーションをとり、納得のいく医療を受けてもらいたいものです。

患者さんによっては、いくつもの病院・医院に通院しており、同じ病気に対して複数の医師からさまざまな薬を処方されているケースも多く見られます。血圧を下げる薬を内科と脳神経外科で処方されている、というような例です。

その患者さん自身は家庭血圧を測らず、自分がどのくらいの血圧かもわからず、2人の医師から降圧剤を出されていることを知らないのです。

まさに、医師まかせのやぶ患者ということになるでしょうか。

薬だけではありません。手術のような大きな医療を提案されたときにも、医療過信には気を付けなければいけません。

例えば食道がんが見つかって、外科手術を提案された場合、「内視鏡で治療することはできませんか?」「抗がん剤や放射線治療で行う方法はありませんか?」「自然経過だと、どうなっていくのでしょうか?」など、医師に治療の選択肢について問いただす方がいいと思います。

医師にはどうしても専門性があり、得意・不得意があります。外科医が食道がん・胃がんの患者さんを診察した場合、外科手術に持っていきがちですし、消化器内科医が食道がん・胃がんの患者さんを診察した場合、まずは内視鏡手術を施行する傾向にあります。