早朝長崎を立ち、フェリーと高速道路を利用して11時頃病院へ着き、2時間近く待って、診察、マッサージ、鍼、灸、リハビリなどを施される。

帰りに簡単な食事をしてさっと帰っても、丸一日仕事になり、1歳の子どもにはあまりの負担かと、二度目からは、島原の善一さんの実家に子どもを預けて、夫婦二人だけで行くようにした。

福岡行きは、善一さんにとっても疲れることだったが、薬は2週間分以上は出せないということで、2週間毎の福岡行きはやめるわけにはいかなかった。先生がとても良心的な方で、薬が効かないとみると、そのたびに調合を変えてくれた。

でも、残念ながら、私たちの最初の目的である虎の骨は手に入れにくいためか、出してはもらえなかった。飲み薬や煎じ薬などいろいろ処方していただいた薬は、結果的には効果がなかったけれども、リハビリのことで一番親身になって相談に乗ってくださった病院はここだった。

この数ヵ月後にT字杖を購入した際、購入した病院では使い方を教えてくれず、杖はあってないような使い方をしていたのが、たまたまH病院に杖をついて行ったら、そこの療法士の先生が、T字杖を持った場合の正しい歩き方を丁寧に教えてくださって、善一さんの歩きが楽になり、なんだか病気が少し良くなったように思えるくらいだったことを覚えている。

ただ、残念なことに、医療費控除の税金の還付申告をする際、自家用車で通院した場合は通院費として認めてもらえなかった。

バスや汽車、タクシーなら認められるというのだが、善一さんの場合、駅の階段やバスのステップでさえ上り下りが大変なので自家用車で行かざるを得なかったのに、それが認められないのは理不尽に思えた。

車で行っても、ガソリン代、フェリー代、高速料金と、一日に1万円近くの出費があったのだ。仮に私の力が強くて善一さんをおぶえたとしても、汽車とタクシーで行けば、二人分の交通費は1万円以内では済むわけがなかった。

その上、子どもを島原に預けたり迎えに行ったりせねばならないのだから、車がなかったら福岡の病院行きは考えられなかったに違いない。こんなふうに、国の保護の網の目から漏れる、私たちのような運の悪い病人がもっともっと全国にはいらっしゃるに違いない。

私は税務署の役人に噛みついたけれども、彼としてもどうしようもないことなのだろう。でもやっぱりおかしいと思う。

※本記事は、2021年3月刊行の書籍『ALSと闘った日々』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。