第一は、市場の潜在需要にマッチした商品「カップみそ汁」「陶器釡めしセット」「和風総菜レトルトパック」ほかを開発し、それを自社工場で製造したこと。

消費者のニーズに対応した個性的な商品は他社との競合が少ないため、価格決定権はメーカーの上野食品にあるので利益が確保できたのである。

第二は、商品の特性に適合したルートに販売したこと。大衆マーケットでなく品質や無添加を重視する自然食品店やテイクアウト店、土産店、ギフトショップ、テレビショッピングなど中小マーケットでの販売に力を入れ、大手と競合するルートは避けた。

第三は、大量生産ができない手作り的な商品の開発に注力したこと。機械化による大量生産ができない商品は、大手メーカーは売上げ規模の拡大が期待できないので市場に参入はしない。しかし、市場規模は小さくてもそこに集中すれば馬鹿にできない売上げになるのである。

第四は、変遷する食品市場に対応したイノベーションに成功したこと。商品開発と販売戦略、戦術は、すべて他社と差別化してマーケティングを展開し独占的地位を占めることが肝要である。つまり商品、販売ルート、販売方法、販売地域、宣伝などが他社と競合しないことが差別化戦略である。

第五は、スーパーなどの大衆マーケットを避けて、大手の通販会社、デパートの通販に、テレビショッピング、生協、高速道路サービスエリアの売店などニッチ市場に絞って企画提案し、集中攻撃を行ったこと。ハードよりもソフトウエアの仕事が多いので女性のセールスを活用して大きな戦力になった。

第六は、月次決算書の説明会を全社員と行い、経営状況を共有していたので、社員が会社に対して公平感を持ち納得して仕事を進めることができた。また、信頼できる会計事務所と連携してアドバイス受けながら計数管理を行ったことはメリット大きかった。

現在、あらゆる商品が店頭に陳列されている中で商品開発に成功することは至難の業と言って良い。特に食品はまず美味しいことが大前提で、その他にも品質、機能、デザインが優れており他社商品と差別化できるかどうかがポイントとなる。

ルートは開発した商品の特性に合っていなければならない。地域はフォローできるところに重点的に拡売して分散させず、他社の弱い地域から攻めて地域ナンバー1を狙うこと。

これらに挑戦して乗り越えることができれば売上げは増大し、会社は生き残れると言っても過言ではない。

上野食品のマーケティング戦略を見ると、弱者が強者に打ち勝つ、まさに他社との差別化戦略であった。

釡めしはご当地の十二種類を手で詰めるので大量生産ができないし、和風総菜レトルトパックは二十四種類で生産のロスが出て大手メーカーには不向きである。

電子レンジ用釡めし一食セットのルートはスーパー、コンビニなどの大衆マーケットでなく、テイクアウト店、土産店、ギフトショップなどで、催事では「全国釡めし祭り」が頻繁に行われそこにも大量に出荷されている。

固形燃料の陶器釡めしセットと和風総菜レトルトパックは通販ルートで売れたが、電子レンジ用の「陶器釡めし一食セット」は先に述べた別のルートで売れており、商品の特性により販売ルートを変えて集中攻撃することが効率良い販売方法になることを証明している。

また一度ルートが出来上がると、そのルートに合った新製品を開発すればシナジー効果により売上げが増加し、得意先と太いパイプで結ばれるメリットもある。実際、上野食品では「フリーズドライ玉子スープ」「フリーズドライのみそ汁具材」「アンデスの天然塩」「和風スープ」などを多数開発して売上げをのし上げ業績に大きく貢献したのである。
 

※本記事は、2020年10月刊行の書籍『復活経営 起業して50年 諦めないから今がある』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。