二〇一八年三月三十一日(土)

明純は四月で還暦を迎える。還暦といえば、自分の両親の還暦祝いは明純が計画した。両親は一歳違いなので一緒に、父に合わせてお祝いした。今からちょうど二十六年前。弟はまだ独身。子供たちはヒョウゴ小二、イオリ年中、サクラ二歳だった。

六歳違いの夫・良典の還暦祝いも明純が計画した。息子たちだけを呼んで、五人で食事をした。だが、六年前とは状況が大きく違っている。ヒョウゴとイオリはそれぞれ家庭があり、それぞれ子供が二人ずついる。何かをするとなると、家族連れで来ることになる。盆と正月だけでも来るのが大変なのに、わざわざ子供を連れてくるのは大変だろう。また、ヒョウゴとイオリだけで良い、というのも角が立つ。それなら。

「サクラ、おにいちゃん達は来るのが大変だから、お祝いとかいいから。毎年一回は、おとうさんと三人で食事をしてるじゃない。それをちょっと豪華にして、三人で食事しよう」

明純は自分の還暦祝いを自分で計画した。

「還暦祝いを自分で計画するもんじゃない」

母の冬子は顔をしかめた。どういう意味だったのだろう。自分で計画したから、残りの人生に最大の不幸が訪れたのだろうか。

良典とサクラと三人で、グレースレイクホテルでのステーキのコース。三人で撮った写真。幸せの絶頂とも思える三人の笑顔。サクラとの最後の写真。そう、事故はそのたった三か月後に起こったのだ。

サクラが誕生祝いに買ってくれたバイソンの掃除機。腰が悪い明純でも楽に使えると言っていた。そして、

「俺が掃除するんだけどね」

と笑った。

サクラ。家の掃除もしてくれた。その時エアコンの中も掃除してくれていた。夕食も作ってくれた。月に一回は、明純の認知症の父親、幸三を車で外出に連れて行ってくれた。ほかにも月に何度か訪問し、幸三を近くの川まで散歩に連れて行った。老々介護をしている明純の母・冬子の話を聞き、相談に乗っていた。予定が合えば、幸三のケアマネージャーの来る日に合わせて来てくれた。親孝行で、祖父母孝行で、気の利く息子だった。

「兄貴たちも俺も、じいちゃんばあちゃんに可愛がってもらった。兄貴たちは杜都市にいないから、俺が兄貴たちの分もやれることをやるんだ」

「おとうさんもおかあさんも、じいちゃんもばあちゃんも、俺にまかせておけ。骨は拾ってやるよ」

嘘つき……骨を拾ったのは、私たちだったよ。

なんでそこまで背負っていたのだろう。あたりまえのように思っていたけれど、こんなにたくさん背負わせていたなんて。サクラ、感謝しかないよ。


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※本記事は、2020年12月刊行の書籍『駒草 ―コマクサ―』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。