遺族への対応、説明は、医療安全の確保を目的とする本制度の外にあるものであるが、医療の一環として大事な事であり、遺族とのコミュニケーション不足が予想外の紛争を招き、遺族にとっても、医療従事者にとっても不幸な事態となることから、原則①遺族への対応の重要性を強調した。

原則②は「法律にのっとった内容であること」、原則③は「本制度は医療安全の確保を目的とし、紛争解決・責任追及を目的としない」、原則④「WHOドラフトガイドラインに準拠すべきこと(非懲罰性・秘匿性を守るべきこと)、原則⑤「院内調査が中心で、かつ、地域ごと・病院ごとの特性に合わせて行うべきであること」、原則⑥「本制度により医療崩壊を加速してはならないこと」。

再発防止策は、個々のケースから短絡的に行うべきではなく、死亡に至らないケースや、ヒヤリ・ハット事例も含めて、従来通り、院内医療安全委員会で検討すべき。既存の医療事故情報収集等事業(日本医療機能評価機構)を活用すべき。

山本和彦座長:あと、2-3分でまとめを

小田原良治構成員:「予期しなかった死亡」の定義について、「予期しなかった死亡」とは、「亡くなるとは思わなかった」という状態であり、「死亡という結果」を予期しなかったものである。

定義すれば、「通常想定しないような死亡」である。「予期しなかった死亡」は「予期」という要素だけに着目して小さく狭く制度を開始すべきであり、医療法も、病院管理者の主観に「予期しなかった死亡」の判断を委ねている。

佐藤一樹参考人(田邉昇構成員代理):WHOドラフトガイドラインが明言するように、いわゆるアカウンタビリティのための事故調と、学習によって事故再発を防止し、もって安全な医療を国民に提供する事故調査制度は両立しない。

今回の改正医療法後の議論でも、「国民の理解が得られない」といった発言をする識者や、医療団体の方もしばしばいらっしゃるが、国民の事故調査制度理解度調査などといった悉皆的な調査は寡聞にして知らず、今回の改正医療法に基づく事故調制度が、アカウンタビリティのための制度でない以上、係る議論は非建設的である。

※本記事は、2018年12月刊行の書籍『未来の医師を救う医療事故調査制度とは何か』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。