やぶ患者、健康寿命めてしまう

やぶ医者(やぶ医者、英語:Quack)とは、適切な診療能力や治療能力を持たない医師や歯科医師を指す俗称・蔑称べっしょうで、ヘボ医者、ダメ医者、庸医よういなどとも言われています。

語源については、ことわざ「藪をつついて蛇を出す」(余計なことをして、かえって事態を悪化させてしまう)からとする説をはじめ、籔のように見通しがきかない医者など諸説があるようですが、かなり昔から使われていた言葉のようです。

「やぶ弁護士」「やぶ社長」「やぶ警察官」「やぶ政治家」「やぶコック」「やぶ大工」などと他の職業では言われないことを考えると、医者という職業の特殊性、医者に対する期待感、それを裏切られたときの喪失感が「やぶ医者」という言葉を生み出したのではないかと思います。

このような言葉があること自体、医師の責任の重さを感じます。昔に比べると人口に対する医師の割合は増加傾向にあり、母数が増えると当然「やぶ医者」も増えているのではないかと思います。

余計な医療行為を行ってかえって事態を悪くさせてしまう医師は、やはり「やぶ医者」でしょう。過剰な延命治療を促す医師は「やぶ医者」と言わざるを得ません。延命治療でなくても、過剰医療を勧める医師には用心した方がいいと思います。

私は、子どもの頃、手塚治虫著の『ブラック・ジャック』という漫画にはまっていました。ブラック・ジャックは無免許の天才外科医で、一般の外科医なら絶対できないような難しい手術を次々と成功させます。

ブラック・ジャックは医師、特に外科系医師の憧れの的であり、この漫画の影響を受けて、実際外科医になった人も多いです。そういうイメージ先行で外科医になった医師には、必要以上に切りたがる医師もいますので注意が必要です。

日本の現在のシステムでは、手先が器用とか、外科に向いているから「外科医」を選択するわけではなく、医師免許さえ持っていれば、医師は自分の希望の診療科を選択することができます。

科の人数制限はありませんので、日本の医師一人当たりの手術症例数は、外科・胸部外科はアメリカの2分の1から3分の1、脳神経外科は30分の1ほどにとどまるといわれています。

そうすると自分の経験値を上げるため、どうしても過剰に手術をしたがる医師が増えてきます。必要性の乏しい手術の術後合併症で苦しんでいる人も少なくありません。

もし医師から手術を勧められたときは、なぜ必要なのかをよく聞き、聞きにくいかもしれませんが、その先生の手術経験数を尋ねた方がいいと思います。大病院は医師数が多いこともあり、大病院だからといって大丈夫というわけではないことも頭に入れておく必要があります。

医師になるには、それなりに学業が優秀でなければならず、医師になる人はいわゆる「真面目な人」が多いと思います。学校での試験の点数が良く、物覚えもいい優等生、そういう人が医師になっていることが多いのです。

反面、融通が利かず、プライドの高い人が多いという欠点もあります。私はこのような医師を見て、「ドクターイズストーン」(医師は石である)というダジャレを思いつきました(笑)。

日々進化する医療を受け入れられず、何十年も前に学んで、これまで行ってきた医療に固執する医師も少なからず存在しており、そのような医師も「やぶ医者」と言わざるを得ないのではないかと個人的には思います。

私はよく患者さんに「やぶ患者になってはいけませんよ!」と言います。

「やぶ患者」は、もちろん私の造語です。

「やぶ医者」にちなんで、何らかの理由でその人に見合った「いい医療」を受けることができていない患者さんのことを「やぶ患者」と名付けました。