はじめに

老境に達した筆者は、そろそろ残り時間を気にする頃合いになった。既に3冊を出版し、以下の二と三は店頭にも並んだ。

第一作『古事記』の中のユダヤ平安京に隠された「ダビデの星」2017年3月第二作隠された「ダビデの星」東寺曼荼羅と平城京外京2018年4月第三作魏志倭人伝の中のユダヤ出雲大社に隠された「ダビデの星」2019年4月(必要な時は、1=第一作、2=前々著、3=前著と略記する)

偶然と幸運にも恵まれ、それらの中で、4つの「ダビデの星」を発見することができた。

①平安京に内接する「ダビデの星」、②東寺曼荼羅の下絵として隠されたもの、③平城京外京に内接するもの、④出雲大社境内遺跡の巨大本殿遺構に内接するもの。その存在はたった一つの数学的公式を当て嵌めることで、機械的に判断することができる。

すなわち、もし「ダビデの星」が内接する長方形があれば、その長辺と短辺との比は、2:√3(=1・1547)となる。逆にその比が1・1547か、それに非常に近い値が得られるなら、その長方形には「ダビデの星」が内接していると言える。だから長方形の長辺・短辺の長さが分かれば、誰にでも簡単に検証ができるのである。

「ダビデの星」の使用は近世になってからであるというように、古代の日本にそれが在ったとすること自体が疑問視されているが、そんな歴史の常識とは別に、数学的な検証によって「在るものは在る」のである。すると、ユダヤ系秦氏を活写した古代史が書かれなくてはならないのだが、歴史学者には、精密な学問的裏付けがないものを書くことは許されないであろう。この一点に、歴史には素人ではあっても、騎馬民族渡来説やユダヤ的視点などとも合わせて、複合的に歴史を見ようとする著者の、存在意義がある。

また前著からの繰り返しにもなるが、本書に掲げる地名などはユダヤ系のものに偏って挙げている。だから朝鮮半島経由のもの、例えば高句麗、百済、新羅、加羅、伽耶、安羅など、またそれらから派生している地名や人名は、もう数えきれないくらいであるから、一々それらを網羅的に述べることはしていない。このことを著述のどこかで、なにかいい訳でもしたくなる時があるので、あらかじめお詫びしておくことにした。

副題にもしたが、神話や魏志倭人伝の相互関係を調査するには、主に次の3点の書物を参考にした。何れも岩波文庫版である。『古事記』、『日本書紀』、『魏志倭人伝・後漢書倭伝・宋書倭国伝・隋書倭国伝』。

そしていつものことながら、この本の結末がどのようになるのか分からない。過去に学んだことがふっと蘇ってきたり、新しい疑問点が出てくれば、次々に史料を繰っていく。

そのうち著述内容が次第に固まってくる、それが著者のやり方である。よく考えたら、趣味の範囲ではあるものの、もう50年も同じようなことをしてきた。著者の過去は、いつの間にか長くなってしまった。

だから筋道の途中で横道に逸れたり、余談で道草をしたり、通常の書籍とは異なることが多いが、歴史を探偵するというのは、結局そういうことである。さて、何処に辿り着けるのか、着けないのか。毎度のことながら、不安混じりの愉しい船出である。

※本記事は、2020年4月刊行の書籍『ユダヤ系秦氏が語る邪馬台国』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。