お話を伺いながら、返事をしつつ、安全確認は怠らない。朝の通勤ピークは過ぎ、道路も少しゆっくりめな流れになってきた。

「お客様、まもなく◯◯屋デパートに到着致しますが、どの辺りにお停め致しますか?」

「ああ、その辺の大丈夫なところでいいわ。あー、いろいろ話したらスッキリしたわ。男性のドライバーさんじゃ、こんな話をしないものね。楽しかったわ〜!」

「私こそ、いろいろお話を伺えて楽しかったです。素敵なお正月をお過ごしになられますように、願っておりますね。もしまた、ご乗車になられましたら、お話、お聞かせくださいね。楽しみにしておりますから」

「嬉しいわ。お名刺くださる? 私はね篠原町の佐藤と申します」

名刺をお渡しし、精算、ドアサービス。

「佐藤様。◯◯タクシーをご利用いただきましてありがとうございました。お気をつけてお出掛けくださいませ」

「ありがとう。あなたのタクシーに乗れて良かったわ。今日は良い日になりそうね」

「ありがとうございます。行ってらっしゃいませ」

頭を下げ、お客様をお見送りした。

(私こそ、佐藤様にお乗りいただいて嬉しかったです。佐藤様が素敵な年を迎えられますように……)

時間を忘れ、お客様のお姿が見えなくなるまで、見送った……。

(今日一日、私も良い日になりそうだな)

と思った。

私も人に笑顔と幸せを感じてもらえるような人になりたい。

タクシーに乗っていると、本当に社会勉強になる。
ふと、ご自身のこと、生活の愚痴をこぼされる方も少なくない。
お客様へ、良い受け応えができているだろうか?

まだまだ、修行中の身。
日々、精進致します(笑)。

ちなみにこの日。
私にとって、最高売り上げを出した。
良い日だった。