国内の研究をまとめると、医師の職務満足度に影響する因子としては医師側の要因として、性別、年齢、結婚や出産の有無、収入、専門性があり、施設側における要因として病床規模、対人関係では同僚やコメディカル、患者との関係があり、医師の職務満足度は患者のケアの質、医療の安全などの患者へのアウトカムや、医師の離職につながる異動希望やバーンアウトに影響を及ぼすことが明らかになっています。

医師の職務満足度は患者のケアの質、患者満足度に影響を及ぼします。医師の職務満足度が高いと、患者は医師に高い信頼を示し、服薬コンプライアンスが高いといった報告もあります。

また医師の職務満足度が高いと、作業手順のミス発生率が低下することが示されていますが、技術的ケアの質には関連性を認めないとの主張もあります。

医師職務満足度は自覚的精神症状やメンタルヘルスにも影響を及ぼすことや、異動や臨床からの離脱希望と関連するとの報告もあります。

しかし、企業における研究では、職務満足度は離職や転職の要因とはなるものの、かならずしも業績や生産性などの成果向上に寄与しないとの報告もあり、職務満足を向上させるだけで業績が改善するものではないとされています。

例えば、「◯◯病院にいると、それほど仕事が忙しくなくて給料がもらえる」とか、「◯◯病院にいると、定年退職まで勤められて安心」とか、ネガティブな職務満足があります。

また逆に組織のことを思うがゆえの「◯◯病院は人的資源管理ができていない」、「◯◯病院の経営上層部に戦略がない」などの批判は、ポジティブな不満足と言えます。

このように職務満足の向上の追求には限界があることが分かります。

※本記事は、2017年12月刊行の書籍『MBA的医療経営』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。