共演のジーンにとっても「サマー・ストック」は出演に気乗りのしない作品だった。

今の彼は望めばどんな企画でも通る立場にあった。作るべき映画は「踊る大紐育」のように斬新で新時代を開くミュージカルのはずだった。しかし、「サマー・ストック」は一昔前にガーランドとミッキー・ルーニーを主演にして作ればちょうど良いような話だった。これでは時代の逆戻りである。だがそれにもかかわらずジーンは共演を引き受けた。デビュー作「フォー・ミー・アンド・マイ・ギャル」でガーランドから受けた恩義に報い、今の彼女を少しでも助けたかったからだ。

ガーランドはコネティカットの農場主。苦労をしながら一人で農園を切り盛りしている。農機具会社の社長の息子エディ・ブラッケンとは四年ごしに婚約しているが、どこか結婚に踏み切れない。ニューヨークに出て行った女優志望の妹グロリア・デ・ヘイヴンが、ジーン主宰の劇団を引き連れ突然農場にやって来る。恋愛関係にあるジーンの作品がプロデューサーに認められるようにと、公演場所として農場を勝手に提供したのだ。

怒ったガーランドは劇団員に農場の仕事を手伝わせるが、慣れない仕事でかえって大混乱となる。当初は反目していたジーンとガーランドだが、様々な出来事を通してしだいに心を通わせていく。ニューヨークで新しい役にありついたデ・ヘイヴンが、主演の男優と一緒に開演三日前に姿をくらます。急遽ジーンとガーランドが主役を務めることになり、特訓が始まる。ブラッケンがこれを邪魔しようと画策するがショーは無事開催され、居並ぶプロデューサーたちの前で大成功を収める。最後はジーンとガーランド、ブラッケンとデ・ヘイヴンのカップルが生まれハッピーエンドとなる。
 

※本記事は、2021年2月刊行の書籍『踊る大ハリウッド』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。