この時点で山田は自社の目標設定がいかに高いかを痛切に感じていた。しかしもう後戻りはできないので、講師の原田の言葉を信用してついていく以外の選択肢はなかった。

〈原田〉さてブレークスルーは「現状突破」「現状打破」の思考であると申しました。

新たな目標を設定するとき、今までの進め方はまず現状がどのようになっているのか「現状分析」を行いますね。そしてその「悪さ加減」を明確にして、その「悪さ」を課題としてきました。この進め方も場合によっては必要かもしれません。

しかしこの分析思考から得られる「目標」や「課題」は現状にとらわれがちになるために、その目標なり課題も現状の延長線上のものになってしまいます。

したがって利益計画の目標値も10%から多くて20%くらいになってしまいます。厳しい経済活動を行っていかなければならない現状においては、ライバルに対して一つでも優位に立たなければなりません。

そのためにはブレークスルーの『課題把握活動』と『課題解決活動』が必要になってきます。

ちょっと堅い話になってしまいましたが、経営課題の把握の考え方として、ブレークスルーは『夢・願望実現のアプローチ』です。すなわち、〝こうしたい〟という願望から課題を設定していきます。『現状延長線上のアプローチ』では、「現状こうだから」という結果をもとにした課題の設定になります。

もうお分かりのことと思いますが、ブレークスルーのアプローチと現状延長線上からのアプローチでは、その答えが全く違ったものになることをご理解できたことと思います。プログラムを進めていく上でも、ブレークスルーの進め方は「恋人探し」であり、一方の現状延長線上のアプローチは「犯人捜し」となります。

研修でどちらが楽しいかお分かりになりますよね。ただし一言申し上げますと、研修を進めていくに当たって厳しいのは〝恋人探し〟のアプローチです。

ここまでの話を聞いて、山田をはじめ他の小松電子工業の5人とも今までの考え方の基本は、従来の企業成績は〝こう〟であったからこれから先は〝これくらい〟が妥当であろうという『現状延長線上のアプローチ』であったことに気が付き始めた。

しかし目標達成に対する不安はまだ払拭するまでには至っていなかった。

※本記事は、2021年2月刊行の書籍『企業覚醒』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。