もともと中医学では、何が原因で病気になり、どのような体質の人がどのような病気になるか、またその病気がどのように変わっていくかを昔から探索していた経緯があります。

したがってその患者さんの状態・体質から病気の根本を探り、症状があらかた落ち着いた時、どこのバランスが崩れたら発症するのかを、中医学の体系の中で、ある程度未然に知ることができます。

例えば水分(湿)と熱が溜まりやすい体質のアトピー性皮膚炎患者は、アレルギーの症状が出る前に大便がべとべとになったり、尿が黄色くなってきたり、体が重だるくなったりすることがあります。

これ自体は過食や酒の飲み過ぎ、過剰のストレスなどさまざまな原因で発生しますが、これらのシグナルを受けた時に対処しておけば、ひどくなることが少なくなるということなのです。

そういったことから分かるように中医学では養生も大切だということを説いています。飲食の不摂生、運動不足、睡眠不足など生活の仕方が悪いと、いくら薬を飲んでも効きが悪いか、全く効かないことすらあるわけです。

考えようによっては、服薬するということを含めて生活全般のありようで治療しているとも言えます。

・特徴

中医学の利点は、その人の体質や症状に合わせたオーダーメイドの対応にあります。治療効果も薬をきちんと合わせることができたら、急性期・慢性期にかかわらず西洋医学に劣らない切れ味を見せることもよくあります。

逆に欠点は、治療法をある程度まではマニュアル化出来るものの、細部に至ってはオーダーメイドゆえの難しさがあり、治療者側の力量にかかわってくることです。

また独特な味や匂いは決していいものとは言えません。さらに製剤化された薬ならともかく、煎じ薬では、煎じる時間を考えると非常に服用しづらいものです。

そして、治療上必要な生活の中での制限・努力がいろいろ出てくるなど、患者側の理解と協力が多分に必要になってきます。

さらに状況の判断に時間がかかるので、現代のような病院のあり方にはそぐわないのかもしれません。

※本記事は、2020年11月刊行の書籍『かゆみの処方箋』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。