再会の扉

それから園井は、週二回くらいのペースで昼時にひとりで来て、カウンターでランチを食べるようになった。

この街に取引先の会社があり、そこの営業担当になったらしい。ただこの時間帯は、ひとりで切り回す私にとって戦闘態勢みたいなもので、ゆっくりと話すことはできなかった。

時折視線が重なった時、園井がにこっとして忙しいねとか、大変だねとか、でも流行ってていいじゃん、とかの言葉をかけてくれるだけだった。

そんな小さな触れ合いでも、重ねた日々の分だけ必然のように心の振れ幅が大きくなっていった。挨拶から雑談へ、そして雑談から時折昔話に移り、近況を報告しあううちに、お互いの趣味や好みも覚えてしまっていた。

そんな二人が惹かれあい、初めて店の外で待ち合わせしたのは、出会って二カ月が過ぎた頃だった。

やあ、と軽く手を上げた園井は、約束の時間に遅れた私を咎めることなく、至ってにこやかに迎えてくれた。

「遅くなってすみません」

こんなに速足を駆使したのはいつ以来だろうか。肩を上下させて荒い息で頭を下げる私に、園井は腕時計を見せて微笑んだ。

「なんで? 今十一時ちょうどだよ」

え? と自分の時計をもう一度確認してみたが、針は十二分の遅刻を示す位置にある。少し遅れそうですみません、とメールを送ったスマホのデジタル表示も同じ時刻だ。

「あ、これ止まってるわ。使えねえなあ」

そう言って大きく笑う園井に、私は詰まりながら遅れた理由を説明した。

「そうなんだ。だからって言うんじゃないけど、その服可愛いよ。牧森さんにすごく似合ってる」

左側を半歩後から歩く私に顔を向けた園井は、

「嬉しいなあ。今日のために服を悩んでくれたなんて」

と続けた。そんな……私はどう答えていいのか返事ができなかった。

服くらい、前の日から用意してろよ、と叱られても仕方ないのに。確かに寝る前からこれと決めて吊るしてはいたのだが、いざ出陣前に鏡と相対すると気おくれしてしまい、数少ない持ち合わせから最善の組み合わせを探す作業に再度時間をとられたのだった。

私はうつむいたまま、すみませんありがとうございます、と小さな声を出すことしかできなかった。

だめじゃん……初デートで遅刻する女なんて……。

「飛行機!」

いきなりの大声にはっとした私は、園井の顔を見るより先に空を見上げていた。

「……が見えるといいんだけど、今僕らの上には飛んでいないみたいだね」

園井は残念がる素振りとは無縁の笑顔で私を見た。「飛んでますけど……あの、あそこ」私が指差す方向を探していた園井は、ああ、あれか! とようやく視認した後で、

「すごいね、あれが普通に見えるって」

と驚いた顔になって首を振っている。

「俺、視力良い方なんだけどな」