居場所作りについて

施設内の家具、調度品のあり方もホテル仕立て、ヨーロッパ仕立ては違うんじゃないかと思います。

入られる方が、自分の住まいとしてすんなりと馴染める居場所として、豪華路線は合わない気がします。きっと元気な自立されている方にはいいのかもしれませんが。

はじめは元気な高齢者でも10年も経てば様相は変わります。90歳を超えれば60%が軽重の差こそあれ、認知症になります。そういう方達に向けた住環境って何でしょうか?

その時に居心地のいい住宅って、やはり、馴染みのある家具やもの、風景ではないでしょうか?

豪華な高齢者住宅は健常者やご家族の目に写りのいい装飾ではありますが、入居者に居心地のいい居場所を創出できているでしょうか?

北海道の人にとって馴染みのある家具や物、風景ってどういうものでしょうか?

北海道の高齢者が元気だった頃に馴染んだものを想定して、木製のレトロな食器棚と家具や遠くに地平線が見える広い北海道の農村や利尻富士、蝦夷富士などの絵、庭を用意しました。

開業以降は入居者さんが少しずつ肉付けをしていってくれました。廊下や居間、娯楽リハビリ室に飾った絵画は入居者さんがプレゼントしてくれたものです。

前庭の植栽の一部をご家族が作ってくれました。こうして、「美しが丘」住宅は老いることなく、年々、居心地がよくなっていきます。

さらに、職員の働いている姿が見えるということも重要に思います。当たり前のことを書いているようですが、高齢者住宅の職員配置はピンキリです。

どこも人件費の高騰と人材難に悩んでいるためか、働いている人の姿が希薄な施設が多々あります。職員の気配をすぐそばに感じる、働いている姿をすぐに見付けられる環境はさぞかし安心なことでしょう。

また、若い人の働いている姿を見て、様々な思いを巡らせることもあるでしょう。冒頭にサービス付き高齢者住宅は、スウェーデンで失敗に終わったと評されたことを書きました。

その失敗とは、コストカットにより施設従業員が極端に減ったため、高齢者が部屋に閉じこもる、単なるアパートになってしまったことでした。

さらに、介護度の重い人を受け入れられるわけでもなく、中途半端な高齢者住環境になってしまったのです。あなたは人気のないガランとしたロビーにたたずんで落ち着くでしょうか?